シュタイナー教育

 

シュタイナー教育について     

シュタイナー教育(しゅたいなーきょういく)とは、20世紀はじめのオーストリアの神秘思想家ルドルフ・シュタイナーが提唱した教育思想および実践を日本で紹介する際に名付けられた呼称である。

ここではシュタイナーの影響を受けた日本の学校法人およびフリースクールにおける学校教育およびそれに準ずる実践と背景の思想を中心に記す。
シュタイナー自身が提唱したこの教育思想と実践の呼び名は、ドイツではWaldorfp?dagogik、英語圏ではWaldorfおよびSteiner educationなどと呼ばれている。

自由ヴァルドルフ学校連盟において認証された、シュタイナーおよびそれに類似した名称を冠する学校およびフリースクールは世界中に1000校以上ある。
アジア・中東地区では、この名称を冠することに制限はないため、各学校で名称を決定し、自由ヴァルドルフ学校連盟に届けるのが一般的である。
現在、日本においては学校法人シュタイナー学園のみが国際自由ヴァルドルフ教育連盟に加盟している。

当時の西ドイツに家族を伴って留学していた時に娘をヴァルドルフ学校に通わせた経験をもつ子安美知子が『ミュンヘンの小学生』という著作においてRudolf-Steiner-Schule Schwabingとそこにおける教育を「ルードルフ・シュタイナー学校(シューレ)」「自由(フライエ)ヴァルドルフ学校(シューレ)」として日本に紹介した[1]。この本が1976年度毎日出版文化賞を受賞し、大きく世間に広まる事となった。
1996年には、NHKの衛星第二放送の「素晴らしき地球の旅」という番組でドイツのヴァルドルフ学校の様子が紹介された。世界的にはユネスコのプロジェクト校に指定されている学校も多い。

ドイツ連邦共和国におけるヴァルドルフ学校の現状・沿革・法的地位などについては、ヴァルドルフ学校を参照されたい。


目次

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  • 1 教育理論の特徴
    • 1.1 魂と身体
    • 1.2 七年期
    • 1.3 4つの気質
  • 2 教育実践の特徴
    • 2.1 オイリュトミー
    • 2.2 フォルメン
    • 2.3 水彩
  • 3 シュタイナー学校
  • 4 教員養成
  • 5 シュタイナー幼稚園
  • 6 問題点
  • 7 脚注
  • 8 外部リンク

教育理論の特徴

魂と身体

人間の魂から身体までを、意識の座である自我、感情と印象の座であるアストラル体、生命の座であるエーテル体、物質から成る肉体の4層に分けて理解する。
肉体が誕生しても他の3層は未分化の状態であり、7歳のときにエーテル体が自律、14歳のときにアストラル体が自律、21歳のときに自我が自律するとされる。
(それ以降も人間の成長は続くが、ここでは教育のみに話をしぼるため割愛する。)従ってその各段階に分けて人間の成長を理解することが重要視される。
魂はさらに意志・感情・思考(表象活動)の3つの領域から理解され、それぞれの発達にふさわしい時期にその能力を伸ばすよう、配慮されている。

七年期

シュタイナー教育では、人間の成長を7年おきに大別してとらえる。
生まれてから成人するまでの21年間のうちに世界から「真・善・美」を全身を通して理解し、その世界と自分との一体感を見いだし、世界の中で自由で自律的に生きることのできる人格の育成を目指す。

  1. 第1七年期(0〜7歳) - 肉体が誕生してからの7年間。この肉体を動かす事、すなわち意志の成長が課題となる。萌芽的な段階にあるエーテル体をゆっくり教育するため、無意識的な活動、特に毎日の生活のリズムを重視する。この時期の子どもは周囲の大人、特に両親からの直接的、間接的な影響を全身に吸い込んで成長する。つまり無意識的にも「(私の周りの)世界は善であふれている」ことを子どもが理解するような教育を目指す。
  2. 第2七年期(7〜14歳) - エーテル体が既に自律し、アストラル体が活動するようになるまでの7年間。アストラル体が司るもの、すなわち感情の成長が課題となる。そのため芸術に重きを置いた教育実践によって、いきいきした感情を育み、「世界は美しい」とおぼろげにも感じられる教育を目指す。
  3. 第3七年期(14〜21歳) - アストラル体が既に自律し、自我がはっきりしてくるまでの7年間。表象活動の活発化が課題となる。明晰な表象活動により「世界は真実に満ちている」ことをはっきり理解する教育を目指す。

4つの気質

自我、アストラル体、エーテル体、肉体のどの領域の活動が優勢かによって、子どもの気質を、四体液説による胆汁質、多血質、粘液質、憂鬱質(黒胆汁質)の4つに大別してアプローチする。

教育実践の特徴

シュタイナーは「現代の人間はスズメバチのようである」とし、頭脳ばかり発達して意志が伴わない状態におかれている事を危惧した。
シュタイナー教育の目指すものは、宇宙にある諸事物の理念を、人間と結びつけて理解し、それによりミクロコスモスとしてのわたしを活き活きとした理念で満たすことである。
その手法として、芸術が重要視される。
芸術を通して人間の4層に働きかけることが教育実践でとくに注目される事である。
それは以下のような特徴的な教科でのみならず、国語や算数といった公教育でおなじみの授業の中でも目指している事である。

オイリュトミー

オイリュトミーの手法を子どもの発達段階にあわせて教授する教育オイリュトミーの授業がある。
音楽のリズムに従って優美に歩いたり、詩を唱えながら言葉の響きに従って体を動かしたりする。

フォルメン

ものの形(Gestalt、ゲシュタルト)の理解のための学習であると誤解される事がしばしばあるが、フォルメン(Formen)は有機的な動きのフォルム(Form)を把握するためのアプローチであり、幾何の授業とは一線を画する。
この授業はエーテル体が自律し、身体が成長する7歳以降の数年間に特に重視される。4年生を過ぎるとその役目を終え、幾何の授業にとって代わる。

水彩

シュタイナー教育で用いられる水彩技法は主に2つである。

  1. にじみ絵
  2. 層技法

ものの形を描くよりも(これは白黒線描として別の授業で展開する)、ゲーテの色彩論をベースとした色の混ざり合いを重視する。

シュタイナー学校

シュタイナー教育を初等・中等教育の段階で総合教育として実践するのが、シュタイナー学校である。
ドイツではシュタイナーが最初に作った学校にちなんで、Waldorfschule(ヴァルドルフ学校)という名称を冠する学校が多い。
Rudolf-Steiner-Schule(ルドルフシュタイナー学校)と名付けられている学校もある。ヨーロッパの学校に関しては原則として連盟による認定式をとっており、Waldorfの名称を勝手に用いることができない。
世界のシュタイナー学校では基本理念を共有しながらも、どの国でも、その国の文化、民族性などに合った形でカリキュラムを組むことが必要とされる。
また、同一国内であっても、それぞれの学校で教育内容は研究され、変更される。
ユネスコのプロジェクト校に指定されている学校も多い。

日本では2008年3月現在、学校法人として文部科学省に認可されているのは構造改革特区での認可を受けている学校法人シュタイナー学園 初等部・中等部(神奈川県相模原市)、学校法人北海道シュタイナー学園 (いずみの学校)(北海道豊浦町)のみで、その他は無認可校のNPO法人が運営する、いわゆるフリースクールである。
NPO法人 あしたの国まちづくりの会 ルドルフシュタイナー学園(千葉県長生郡)、NPO法人 東京賢治の学校 自由ヴァルドルフシューレ(東京都立川市)、NPO法人 京田辺シュタイナー学校(京都府京田辺市)、NPO法人 横浜シュタイナー学園(神奈川県横浜市)、NPO法人 藤野シュタイナー高等学園(神奈川県相模原市)などがある。

教員養成

ドイツ、アメリカ、イギリスをはじめ、シュタイナー学校と併設する形で教員の養成に努める施設が存在する。
その多くは、初年度にシュタイナーの基本思想とシュタイナー教育の実践を学ぶ基礎コースを含む2年から4年にわたる制度を採用している。
ドイツでは、公立学校の教員免許を取得した上で教員養成を受講したものにのみ、ヴァルドルフ学校の国際的な免許を発行する。
日本で教鞭を執っている教師・講師のほとんどが、こうした国際的な免許を海外で取得しているか、NPO法人日本アントロポゾフィー協会の主催するシュタイナー教育教員養成講座にて学んだ後に、普遍アントロポゾフィー協会教育部門(スイス・ドルナッハ)か発行する基礎課程の修了証を取得している。

シュタイナー幼稚園

シュタイナーの存命中にシュタイナー幼稚園は完成を見ず、現在ではシュタイナーの思想に基づく教育を行うとする幼稚園がシュタイナー幼稚園と称している。
その数は世界中に1000園以上あるとされている。
日本では日本シュタイナー幼児教育協会が2009年から教員養成教育講座を行うなど、シュタイナー幼児教育の普及に努める。

問題点

この節には『独自研究』に基づいた記述が含まれているおそれがあります。解釈、評価、分析、総合の根拠となる出典を示してください。

日本におけるシュタイナー教育とドイツにおけるシュタイナー教育は文化の土壌が違うため、当然のことながら、内容が異なる。
これはシュタイナー自身、そうあるべきであると言い、それぞれの国における文化に根ざすべきとしている。
したがって、日本におけるシュタイナー教育は、日本で発祥したものではないため、当然にドイツやアメリカなどで学んだ者が、日本に持ち帰ったものである。
そのときに、人によって、なにを学び、なにを感じたかが違うため、学校によってシュタイナー教育についての捉え方が、異なる。
その見解の相違から、日本におけるシュタイナー教育でも、交じり合わないグループが見受けられる。
また、シュタイナーという他者の言うことに固執するあまり、自身の感覚や直感に信頼をおけない人もたまに見受けられる。
シュタイナーの本には「〜なければならない」という記述が多い。
これは自由の教育ではなく、「自由への教育」という言葉によって、それそのものが「自分勝手なもの」ではないことによるものと思われるが、その言葉によって、意志の中心が、自分以外の外においてしまう教育者が作り出す教育は、5感に根ざした全人格的教育にはなりがたいのではないか。

脚注

  1. ^ 子安美知子 『ミュンヘンの小学生 娘が学んだシュタイナー学校』(中公新書 1975年12月)
  2. ^ ルドルフ・シュタイナー『現代の教育はどうあるべきか-現代の精神生活と教育-』佐々木正昭訳 人智学出版社 p.307

外部リンク

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