子どもの排便障害

 

適切な幼児教育は後の
人間形成において大変重
要であると考えています
が注意していただきたい
ことがあります。
幼児教育は完璧な育児や
教育を推奨するものでは
ないということです。


 ・愛情が第一を忘れない
 ・他の子どもと比較をしない
 ・完璧主義にならない
 ・結果を期待しすぎない
 ・ゆったりとした心を持つ
 子どもへの過剰な期待は
 親子共に大きなストレス
 になる可能性があります。
 ゆったりと構え、少しくら
 い上手くいかなくても
 「まぁ、いっか。」
 位に考えられることが幼
 児教育を続けられるポイ
 ントになります。 

子どもの排便障害  はやし浩司先生の子どもの問題・悩みQ&A

はやし浩司先生【あるお母さんからの相談】



●便秘する子ども

はじめてメールさせて頂きます。インターネットで、「幼児・心因性・便秘」のキーワードで検索し
て行きましたところ、このホームページにたどり着きました。

私は、岡山県W市に住んでいます、HEと申します。

現在、2才10ヵ月と1才4ヵ月になります男の子の母親です。今日は、その2才10ヵ月の長男(就
園前です)について、御相談にのっていただきたく、メールさせていただきました。

発端は、一年と少し前の事になるのですが、それまで生まれてこの方、便秘などしたこともない
長男が、急に1週間程、便が出ない日が続きました。1週間後にやっと便が出たときには、ウ
ンチはカチカチで少し出血してしまいました。ですがその時はただの便秘だろうと、あまり気に
はしなかったのですが、その日から現在まで、ずっと便秘(?)がつづいています。

これだけなら小児科へ連れて行って便秘薬をもらってくれば済む話なのですが、どうやら息子
は、便秘(便意をもよおさない)なのではなく、「意識的に便意を我慢している」ようなのです。

最初はそれに気づかず、小児科でもらった薬を根気よく飲ませていたのですが、どうにも息子
の様子がおかしいので、よくよく観察して見ると、便意をもよおすと、最初のうちはジッと動か
ず、それでは我慢しきれなくなってくると、今度はトントンとイスやテーブルなどに、つかまりなが
ら足踏みを始めます。親に力一杯、抱きついてくることもあります。

そこで、再度小児科を受診して、今度はちゃんと「ウンチを我慢してしまうんです」と、お医者様
に訴えたのですが、「反抗期なのでしょう」「お母さんの方で頑張ってみて」とおっしゃっていただ
くにとまり、いただいたお薬の方も子ども用の便秘薬では息子が我慢し切れてしまうため、効
果がありません。

仕方がないので3〜4日程度たって、いよいよ、お腹が満杯状態だなと思うころ、浣腸やぬるま
湯などをおしりから入れてやり、どうにも我慢できない状態にして無理に出させています。それ
も当然の事ながら、息子がとても嫌がるので、見ていると、とてもつらいです。

小児科へ行ってもダメ、自分なりにインターネットや知りあいなどからも情報収集してみたもの
の、ただの便秘ならとてもポピュラーで色々ヒットするものの、「ウンチを我慢する子ども」となる
と全くと言っていい程情報が入ってこないのです。そこで、わらをもすがる思いで先生に御相談
させていただこうと思った次第なのです。

それ以外の息子の様子、性格ですが、他に親から見て、「困った事、歯がゆく思うこと、変わっ
た癖」など、気になることはほとんどないと思います。性格も明るく、人懐っこいので、誰からも
割と好かれますし、子どもどうしでも、例えばスーパーのガチャガチャコーナーなどに居合わせ
た初対面の子どもなどとも、スムーズに溶け込んで友達になれたりしています。家と外での態
度も、ほとんど変わりませんし、いつも大声で騒ぎ笑っています。

●赤ちゃんがえり?

この騒動が始まったのが、ちょうど次男の出産と重なる時だったため、最初は赤ちゃん返り
(?)などが原因になっているのではないかとも思ってみたのですが、ある程度次男が成長した
現在では、兄弟仲も、とても良く、親が1階にいても、兄弟二人で連れ立って2階にあるおもち
ゃの部屋へ行き、二人きりでも仲良く遊んでいます。


そういう時には、あまり様子を見に行ったりしないのですが、長男が次男を、親が見ていない所
でいじめている様子もないようです。時々「ワーッ」と次男の泣き声が聞こえてきたりもします
が、積み木で作ったものを壊された長男が、怒って次男を叩いたり突き飛ばしたりと、長男にし
てみればちゃんと理由がある事のようですし、長男によって、次男がひどい怪我をしたようなこ
とも、今までに一度もありません。なので、やっぱり「赤ちゃん返り」とはちがうのではない
か・・、と思ってみたりもするのです。

数少ないインターネットから獲た情報で、「これくらいの歳の幼児(とくに男児)に、時に自分の
ものを出したくないという心理から、ウンチを我慢してしまう子がいる。」というような事が書いて
あるのを見ました。それ以外には、「何か心にトラウマみたいなものがあって、それが影響す
る」とも・・。

ですので、私としては、「きっと大した意味もないのだろう。いつか良くなる」と思えたり、「何か
私が気付かないうちに、息子の心に傷を負わせてしまったのだろうか」などと、ぐるぐると前向
きと後ろ向きの考えが行ったり来たりする毎日です。

この件についての夫の意見は(夫婦仲は良好です)、「便意にまでいどむなんて、RT(息子)ら
しい。きっとそのうち飽きるよ。ほっとけ」です。(夫と息子の仲も良好だと思います)ですが、毎
日必死で便意を我慢している息子を見ていると、やはり何か深い理由があるのではないかと
思えて来てしまうのです。

今日、恐る恐る、お絵書き中の息子に、「お母さんの絵描いてみてよ」と頼んでみました。する
と、その時持っていたブルーの色鉛筆で、紙一面に「これ母ちゃん」と言って、この位の歳の子
特有の、顔から手足が伸びているような絵をニコニコと嬉しそうに描いてくれました。Vリーグキ
ャラクターのバボちゃんに似た感じの絵です。

その後、頼んだ訳ではないのですが、「これはRT」と言ってその紙の裏側に自分の絵、そのす
ぐ隣に「これはSEくん(弟)」と言って、SEちゃんを含め、全部で3人、楽しそうに描いてくれまし
た。

この子が本当に何か、大きな心の傷に苦しんでいるんだろうか・・。考えれば考える程、分から
なくなってくるのです。

便意を我慢してしまう、という以外には何も息子に対して重大な心配事が無いにも関わらず、
何故そこまで私がウジウジと悩んでしまうのか、それには私個人の問題が関係しているのかも
知れません。

●私の過去

私の育った家庭はあまり幸せではなかった気がします。一つの家庭しか知らなかったので、子
ども時代はそれに気付きませんでしたが、いわゆる「だれのおかげだ」的なことを言う父と、自
分の思い通りにならないとすぐキレる母でした。子ども時代の私はいつもビクビクおどおどして
いましたし、今思うと、かなりの分離不安もあったのだと思います。

小学校低学年までは、母が参観会でもないのに一人で教室のうしろで見学していたこともあり
ます。何十人といるクラスの中でも極めて心に大きな問題のある生徒だったのではないでしょ
うか。

ちなみに、担任の先生に呼ばれて見学した母は「あの先生細かいこと言い過ぎ」などと言って
いました。子ども時代の私は、それを「そうなんだ、先生の方が悪いんだ」と思ってしまっていた
のです。母は絶対でしたから。

父や母に言われたりされたりした事の中で、強く印象に残っていることを幾つかあげさせて下さ
い。

●父母のこと

ある日突然父から、「今日は高速道路を通って保育園行こうね」と言われ、そのまま遠方の叔
母の家に預けられました。後から知ったのですが妹が入院する事になったためだったそうです
が・・・。悔しかったです。

母はずっと専業主婦でしたが、あまり遊んでもらった記憶はありません。保育園や学校から帰
って来ると、たいてい母が家にいましたが、私がしつこく話しかけたり、遊ぼうなどと言ったりす
ると、怒られました。いつも部屋の隅にまでおいつめられ、物や素手で叩かれていました。小学
生の頃一度、腕をつねられて倍の太さはあろうかと思うほど腫れ、痛みで一晩眠れなかったこ
ともあります。

髪型も中学に上がってしばらくは母に決められていました。美容院に連れて行かれ、「短くして
下さい」などと、母が注文をするのです。私は黙って従うしかありませんでした。

自分の好きな髪型にできないので、当然の事ながら私は美容院が大嫌いだったのですが、美
容院に行く事に対して抵抗すると、ハサミを持って家中追いかけまわされました。風呂場へ引
きずっていかれ、頭から水をかけられたこともあります。

美容院で髪をつんつるてんにされ家に帰って来てからメソメソ泣いていると、また「わずらわし
い」と言って怒鳴られました。

そのころ、ちょうど思春期に入るような頃だったと思うのですが、少しずつ私も胸が出はじめ、
母にブラジャーをすすめられた時の事ですが、私はまだ気恥ずかしいし、窮屈だしで「まだシャ
ツでいい」といったのです。すると母は、「へっへ〜! おっぱい、ブーヨブーヨ〜!!」と言いました。

私は恥ずかしさと悔しさで、その場で泣叫びたい気持ちでした。それが原因で胸を隠そう隠そう
としているうちに、私は猫背になってしまったのですが、それについても、母には「お前は姿勢
が悪い。だらしない」と怒られていました。

いつもそんな感じでした。「お前はセンスがないね。ださいね」とか、「明日引っ越しなのに、熱
なんか出さないでくれる?」とか・・。

今さら恨んでも何にもならないのは分かっているのですが、いまだに心のどこかで母のことが
許せないでいるのです。

ですが、母もまた不幸な家庭に育ちました。母は4人兄妹の末っ子なのですが、母がまだ赤ん
坊の頃、母親が出て行ってしまったそうです。原因は父親にあるのですが、(酒、女遊び)そう
いう子どもって、捨てた(?)側の母親を恨むものなのですね。そのあたりは私にも理解できな
いのですが。

それでもやはり祖母は自分の子どもが気がかりだったらしく、私が中学生の時に一度、祖母か
らうちの母に、電話がかかってきたことがありました。当時は父の仕事柄、引っ越しが多かった
ので、色々な人に行方や電話番号を聞いて、かけて来てくれたのだと思うのです。

しかし母は、「いいえ私じゃありません。知りません」と言って、他人のふりをして切ってしまった
のです。理屈ではなく、どうしても自分の母親を許せなかったのでしょう。母もまた、自分の中
のトラウマと闘っているようでした。

そう考えてみると、離婚もせず一つの家庭を守り抜いた母は、母なりに悪循環のリングを断ち
切る事ができたのでしょう。そういう意味では、母には一定の評価はしています。冷たい言い方
なのですが・・。

でも、祖母を許せなかった母、母を許せないでいる私・・。この悪循環が、私の子育てにもし影
響を及ぼしていたらと思うと、不安で仕方がないのです。息子たちも、私や母がそうだったよう
に、親を恨むようになってしまうのではないかと。

そう言うわけで、子どもがうんちを我慢してしまう、というそれだけのことで、「私のせいなのか
私のことが嫌いなのか不満があるのか」とぐるぐるぐるぐると考えてしまうのです。

息子たちには、誰かを恨むことなく、自由に生きて欲しいと思っているのですが・・。

長々しくなってしまって、申し訳ありません。つたない文章をここまで根気よく読んでいただき、
本当にありがとうございます。どうか、息子の心因性の便秘の件、良きアドバイスをお願いしま
す。原因を取り除くカギや、息子がモジモジとし始めたとき、知らんふりをしていれば良いもの
なのか、それとも積極的に「我慢なんてしてはだめだよ」みたいな言葉をかけてあげたほうが
良いのか、対応に迷っているのです。

何か、アドバイス頂けたら幸いです。どうかよろしくお願いします。

最後に、もし先生の専門外のとんちんかんな質問でしたら、どうかお許し下さい。

W市 HEより

【はやし浩司より】

●赤ちゃんがえりが遠因による排便障害(異常)

年齢を逆算すると、長男は、二男誕生以後、排便障害が始まったことがわかります。赤ちゃん
がえりが、依存うつを併発し、それがこじれて、心因性の便秘になったものと、私は考えます。

排便、排尿障害には、定型がありません。多いのが、夜尿、頻尿、遺尿、おもらしなどです。便
秘もその一つですが、排便をこらえるため、ふつうでない太いウンチや、大量のウンチ、下痢
をしたりします。HEさんのお子さんのように、血便まじりの便秘については、私もはじめての経
験ですが、ありえないことではないと思っています。

よくあるのは、受験期にいる子どもが、気うつが原因で、便秘になるケースです。この時期に
は、一週間〜一〇日という便秘も珍しくありません。(修学旅行先で、それが原因で、救急車で
病院へ運ばれた子どものケースを知っています。浣腸がささらなかったほどの便秘だったそう
です。)

赤ちゃんがえりを、親たちは軽く考えますが、決して軽く考えてはいけません。「嫉妬」という、き
わめて原始的な感情をいじるため、症状も千差万別、かつ複雑です。おとなでも、嫉妬に狂う
と、自分を見失うことは、よくありますね。

表面的な症状だけをみると、弟思いの、よい兄といった感じがしますが、反動形成が疑われま
す。嫉妬が転じて、よい兄を演ずるというのが、それです。RT君は、外では明るい子どもという
ことですが、それもやや気になります。その反動形成は、こういうケースでは、よく見られる現
象で、決して珍しいものではありません。(反動形成については、原稿をここに添付しておきま
す。)

で、なぜ便秘か、ですが、年齢によります。逆算すると、ちょうど満一歳六か月のときに、下の
子どもが生まれたことになります。この時期は、まだ「顔見知り(マザー・アタッチメント)」が残る
時期でもあり、フロイトがいうまさに、「肛門期」※にあたります。

※……このころ、トイレットトレーニングができるようになります。うまくいかないと、消極・内向
的になりと言われています。またがんばりすぎるタイプは、ケチになると言われています(精神
分析的人格理論)。

排便による快感を覚える時期に、それができなかった……? もし私がフロイトなら、こう結論
づけるでしょう。

「肛門期の排泄(トイレットトレーニング)障害」と。

ですから、対処方法は、ただひとつ。濃厚なスキンシップの復活です。子どもの側からみて、絶
対的な安心感を覚える環境づくりを大切にします。ここで重要なのは、このことには、HEさんの
過去が、密接にからんでいるということです。それについては、もう少しあとで説明するとして、
便秘について、もう少し、考えてみます。

フロイトがいう肛門期というのは、「体内にたまった不要なものを排泄する喜びを感ずる時期」
という意味です。大便は、その象徴でしかありません。

抑圧された心を、外に排泄することに対して、恐怖をいだき、それが便秘という症状になったと
私は考えます。こうした無意識下の行為は、子どもの世界では、珍しくありません。そのため、
つぎのような症状も見られるはずです。

(1)親の前でいい子ぶる。(よい兄を演ずる。)
(2)愛想がよい子に見え、周囲の人に迎合する。自分を隠す。好かれようと無理をする。
(3)親からは、がまん強い、できのよい子どもに見える。(お父さんが、「RTらしい」と思ってい
る部分が、それです。)
(4)どこか親からみて、何を考えているかわからないところがある。
(5)ほかにも、神経症による症状があるはず。(くわしく観察してみてください。神経症による症
状は、私のサイトの、子ども診断のところに書いてあります。爪かみ、髪いじり、指しゃぶりな
ど。症状は千差万別です。定型がないのが、特徴です。)

 あとは赤ちゃんがえりに準じて、対処します。全体に、もう一度、RT君に、すべての愛情を注
ぎ、様子をみながら、少しずつ手を抜きます。ただしかなり根気のいる作業で、赤ちゃんがえり
(退行性)が、数年にわたってつづくように、簡単にはなおらないと覚悟してください。まだ三歳
ということを考えるなら、一年単位での観察が必要かと思われます。

 が、本当の問題は、このことではありません。もう一つ、大きな問題が隠されています。それ
が、HEさん自身の、トラウマ(心的外傷)の問題です。

●基底不安が原因による育児不安

HEさん自身が、自覚しているかどうかはわかりませんが、HEさんは、全幅に、子どもに対し
て、心を開いていない可能性があります。またその可能性が大です。つまりHEさん自身が、心
の開き方を知らないでいる。だから長男のRT君も、母親である、HEさんに、心を開けないでい
る?

本当なら、RT君は、母親のHEさんに向かって、大声を出したり、泣き叫んだりしながら、愛情
の復活を要求しても、おかしくないのです。弟に対して、乱暴したり、意地悪したりして、よいの
です。(むしろ、そのほうが自然であり、あとあと、問題も軽くすみます。)

しかし、RT君は、言いたいことも言えず、したいこともできないで、「いい子」ぶっている。もっと
も甘えたい時期に、下の子どもが生まれ、それができなくなってしまった。RT君のかかえた、
欲求不満は、相当なものであったと考えられます。

で、その原因はといえば、親として、自分の子どもにすら自己開示できない、HEさん自身にあ
るということです。

HEさんは、RT君に対して、自分をさらけ出していますか? 自分の心を正直に、話しています
か。HEさん、あなた自身が、子どもの前や、夫の前で、あるがままの自分をさらけ出していま
すか?

実は、ここが重要なのです。

あなたはひょっとしたら、あるがままの自分をさらけ出すことに、大きな不安を覚えている。だ
からこう悩むのです。「この悪循環が、私の子育てにもし影響を及ぼしていたらと思うと、不安
で仕方がないのです。息子たちも、私や母がそうだったように、親を恨むようになってしまうの
ではないか」と。

こういうのを心理学では、基底不安と言います。HEさんは、そのため子どものときから、他人と
のかかわりが苦手だったはずです。孤独で、さみしがり屋である反面、人とかかると、心的な
疲労感を覚えやすいというように、です。

で、他人とのかかわりは、それでよいとしても、多くのばあい、親子、さらには夫婦の間でも、同
じような問題が起きるということです。そしてそのことが原因で、今度は、子どもの側も、安心し
て、親であるHEさんに心を開けないということになります。こういう関係が積み重なって、子ども
は親の前で、仮面をかぶるようになり、一方、親は、本来楽しいはずの子育てが、苦痛に満ち
たものになります。

そこでその原因は何かというと、HEさんご自身がすでに気づいておられるように、HEさんと両
親の問題がからんでいます。

しかし今さら、HEさんの幼児期を悔やんだり、両親を恨んでもしかたのないことです。ただ事実
は冷静に見ます。この問題は、「そういう過去」があったということがわかるだけでも、問題の大
半は解決したとみます。あとは時間が解決してくれます。

●はやし浩司より、HEさんへ

 この問題は、ここに書いたように、一義的には、赤ちゃんがえりがこじれたことが原因と考え
られます。同時に、あなた自身の複雑な過去が、それにからんでいます。いくつかのポイント
を、もう一度、整理してみます。

(1)ゆがめられたRT君の心……嫉妬するならするで、本来なら、RT君は、それを全身をつか
って表現したら、よかった。しかしそれができなかった。よくある例は、下の子いじめ。嫉妬がか
らむと、上の子は、下の子を、「殺す」寸前までのことをします。これをプラス型というなら、ネチ
ネチと甘えたり、赤ちゃんのようにグズったりするのは、マイナス型ということになります。が、R
T君のケースは、母親との特殊な関係が、症状をこじらせたと考えられます。時期的には、まさ
に肛門期の排泄障害となったわけです。

(2)自己開示できないRT君……メールからだけでは、よくわかりませんが、RT君は、便秘だ
けではなく、生活のさまざまな面で、かなり無理をしていることが、考えられます。だいたい「い
いお兄ちゃん」であること自体、おかしいのです。本来なら、親に対して、欲求不満を、正面か
らぶつけてよいはずです。が、それができないというのは、RT君に責任があるというより、母親
であるHEさんが、子どもに対して、全幅の自己開示をしていないことに原因があると考えられ
ます。

(3)不安を基底としたHEさんの子育て……HEさん自身が、不安を基底とした子育てをしてい
ます。しかし本当は、子育てが不安なのではなく、HEさんのようなタイプの母親は、何をして
も、不安なのです。その一つが、たまたま今、子育てに向いているだけです。「子どもはいつ
か、自分の心を見ぬくのではないか」とです。そしてさらにその原因はといえば、HEさんと、
親、とくに、母親との関係があります。HEさんの母親自身も、不幸にして、不幸な家族関係を
経験している。そういうリンク(HEさんの言葉)が、つながって、今のHEさんとRT君の関係をつ
くっています。

(4)HEさんの過去……しかしここが重要ですが、こうした過去があることを、とやかく言っては
いけません。だれしも、その程度の不幸(失礼!)は、もっています。問題は、そういう過去があ
ることではなく、そういう過去があることに気づかないまま、その過去に振りまわされることで
す。しかし幸いなことに、そしてとても賢明なことに、HEさんは、そういう過去があることにすで
に、気づいています。つまりすでに、問題の大部分は、解決しているということです。

(5)では、どうすればよいか……もっと心を解き放ちなさい。あなたはRT君の便秘のことで悩
んでいますが、RT君の「ウンチ」は、あなたの心の中にたまったゴミだと思ってください。あなた
がそのゴミを外に出さないでいる。それをそっくりそのままRT君が、自分の体を使って、あなた
に教えているのです。わかりますか? この子育ての深遠な不思議を、です。あなたが母親を
うらみたいなら、もっと大声を出してうらめばよいのです。うらんで、うらんで、うらみまくる。その
結果として、つまりそれが限界に達したとき、あなたは、母親に対して、ある種のあわれみを覚
えるはずです。そのとき、あなたの心は解放されます。RT君もあなたの心を開き、「ママ、さみ
しいよ。ぼくもかわいがってよ」と言うだろうと思います。あなたがいい子ぶっていて、どうしてR
T君が、仮面をはずすことができるでしょうか。

(6)夫との関係……HEさんは、夫との関係は、良好だと言っておられます。もしそうなら、それ
は問題ありません。しかし本当に、あなたは夫に対して、全幅に心を開いているかどうか。そし
てあなたの夫は、あなたを全幅に受けとめているかどうかを冷静に、判断してみてください。ひ
ょっとしたら、そういうあなたに対して、あなたの夫は、心さみしい思いをしているかもしれませ
ん。あなたは夫の前で、すべてをさらけ出していますか? 夫の胸の中で、過去や、つらかった
思い出を、すべて話すことができますか。あるいは話していますか。もしHEさんが、夫の前で、
仮面をかぶったり、いい妻を演じているなら、そうであってはいけないということだけを、よく覚
えておいてください。

(7)最後に……身体的な変調、つまりがんこな便秘については、ドクターに相談なさっておられ
るようですから、そのドクターの指示に従うのが、よいか思われます。しかし夜尿症が簡単にな
おらないのと同じように、心因性の便秘も、簡単にはなおりません。環境が大きく改善されて
も、症状だけは、今、しばらくつづきます。そこでつぎのことに注意してみてください。

●濃厚なスキンシップの復活。下の子が生まれる前の状態に、生活習慣を、一度、もどしま
す。添い寝、いっしょに風呂に入る、手つなぎ、抱っこなど。子どもが求めてきたら、こまめに、
そしてていねいに応じてあげるのが、コツです。

●Ca、Mg分の多い食生活に心がける。海産物、魚類が好ましいことは、言うまでもありませ
ん。もちろん便通によい食生活も、大切にします。Ca、Mgは、天然の精神安定剤と思ってくだ
さい。

●HEさん、あなた自身も、「いい家庭をつくろう」とか、「いい母親でいよう」とか、そういう気負
いを捨てなさい。あなたはあなたです。居直りなさい。そして先にも書いたように、心を解放しな
さい。あなたがまず、心を開いてみせるのです。RT君は、あなたにつづいて、自分の心を解放
します。

●とりあえず、あなたの夫に、胸のうちを、洗いざらい、話してみることです。とくにあなたの過
去について、です。徹底した自己開示をしてみます。そして悲しいことや、つらいことが頂点に
達したら、ワーッと泣けばよいのです。泣いて、叫んで、怒鳴ればよいのです。「チクショー、バ
カヤロー!」とです。こういう自己開示を。カタルシスと言いますが、カタルシスをすると、そのあ
と、心が安らぐはずです。一度、試してみてください。なぜなら、あなたの夫も、ひょっとしたら、
心のどこかでさみしい思いをしているかもしれないからです。

 以上、ざっと考えてみました。繰りかえしますが、もうすでにHEさん、あなたは自分の過去に
気づいています。多分、若い方だと思いますが、その若さで、ここまで気づいておられるという
ことだけでも、すばらしいことです。だから自信をもって、前向きに進んでください。トンネルの
出口はそぐそこですよ。

 またRT君の便秘も、あなたが考えるほど深刻な問題ではありません。むしろ心配するとすれ
ば、RT君が、あなたの前で仮面をかぶっていることです。こうした仮面は、扱い方をまちがえる
と、心の遊離、さらには、さまざまな心の問題へと発展していきます。くれぐれもご注意くださ
い。言うなれば、便秘は、その黄信号ということになりますね。

 以上が、私のアドバイスです。参考にしていただければ、うれしいです。また何かあれば、ご
連絡ください。


●子どもの問題・・・子どもに関する問題 ●親子の問題・・・親子に関する問題
●家庭の問題・・・夫婦家族に関する問題 ●その他・・・その他の問題


情報・画像の出展:はやし浩司先生

※このページの文章・及び画像の著作権は「はやし浩司」様が保有しています。
当サイトでは「はやし浩司」様のご厚意により許可を得て掲載させていただいております。


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