兄弟の問題

 

適切な幼児教育は後の
人間形成において大変重
要であると考えています
が注意していただきたい
ことがあります。
幼児教育は完璧な育児や
教育を推奨するものでは
ないということです。


 ・愛情が第一を忘れない
 ・他の子どもと比較をしない
 ・完璧主義にならない
 ・結果を期待しすぎない
 ・ゆったりとした心を持つ
 子どもへの過剰な期待は
 親子共に大きなストレス
 になる可能性があります。
 ゆったりと構え、少しくら
 い上手くいかなくても
 「まぁ、いっか。」
 位に考えられることが幼
 児教育を続けられるポイ
 ントになります。 

兄弟の問題  はやし浩司先生の家族・家庭の問題・悩みQ&A

はやし浩司先生●長男、二男の問題



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茨城県M市にお住まいの、Tさん(母親)から、
長男(7歳)、二男(6歳)の問題について、
質問がありました。

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【Tさんより、はやし浩司へ】

いつもマガジンを拝見させていただいております。
毎日の生活の中で、ハッと振り返る良い時間をもてることに感謝しています。

二人の、男兄弟について質問します。

長男は比較的育てやすく、情緒も安定しており、今までは特に問題はなかったのですが、最近
次男のほうが、上の子に対してライバル心を持つようになりました。

もともと下の子の方が運動神経もいいこともあり、二人の興味対象である野球で、下の子のほ
うが上手になってきました。

それにつれて、勉強のほうも、私が長男に教えていますと、傍から見ていて同じように覚えてい
くので、今では2桁の足し算引き算、および掛け算もいえるようになってきました。

年齢が1歳と少ししか違わないこともあり、長男は最近プライドを傷つけられたのか、下の子を
ずいぶんといじめるようになり、また「自分は生きていても仕方がない」などというようなことを言
うようになり心配しています。

なるべく長男が自信を回復するようなことをするように仕向けていますが、なかなかうまくいきま
せん。勉強も運動も次男の方が上手になるという話は良く聞きますので、(例えばプロ野球の
選手は次男が多いなど)、林先生のところではどのように対処されているのかお伺いしたいと
思います。

どうぞよろしくお願いいたします。

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【はやし浩司より、Tさんへ】

 一見、この問題は、兄弟の間の確執のようにみえます。しかし問題の本質は、(親)を間には
さんだ、三角関係にあるとみます。

 長男の心の中に、一度、視点を置いてみると、それがわかります。

 長男は、弟に対して、自分が劣っていることを、問題にしているのではありません。長男は、
親のTさんや、父親の関心が、弟のほうに向いていることを、問題にしているのです。あるいは
自分より、弟のほうに、関心がうつるのを心配しているのです。

 恐らく、下の弟が生まれたときから、何らかのわだかまりが、長男のほうに生じたと思われま
す。その時点から、自分への愛情(手間)は、半分になった。しかもことあるごとに、「お兄ちゃ
んだから……」という「ダカラ論」を、押しつけられた。

 こうして長男のほうに、大きな欲求不満が蓄積するようになったと考えられます。Tさんは、
「育てやすかった」と言っていますが、それはそれだけ、長男のほうが、自分の立場を守るため
に、「いい子」ぶっていただけとも考えられます。

 ものわかりがよい、よい兄を演じていた。親に好かれるために、です。その可能性は、じゅう
ぶん、あります。

 が、その弟のほうが、何かにつけて、優秀ということになってきた……。兄の長男の立場とし
ては、ただごとならぬ状態になってきたわけです。

 こういうケースのばあい、子ども(長男)は、ふつう、つぎの4つのパターンのどれかを、選択し
ます。

(1)親や弟に対して、攻撃的になる。
(2)親に対して、同情を求めるようになる。
(3)親に対して、依存的、服従的になる。
(4)内閉したり、親を拒絶したりするようになる。

 長男が、「自分は生きていても仕方がない」と言うのは、そう言いながら、親に同情を求めた
り、親の反応をうかがっているものと考えてよいようです。こうした(ぐずり)は、すでに、下の子
どもが生まれた、2歳前後からあったはずです。

 もう少し深く、長男の心の中に、視点を置いて考えてみましょう。

 あなたの夫が、あなたよりすてきな愛人を、家の中に連れてきたら、あなたはどうするでしょう
か。少し極端な感じがしないでもないですが、長男の置かれた状況としては、それほどちがわ
ないはずです。

 その愛人は、あなたより、若い。美しい。料理もうまい。……そういうとき、あなたなら、どうす
るでしょうか。嫉妬もせず、平穏に、その愛人と同居できるでしょうか。あなたの夫が、「お前
も、愛人も、平等にかわいがってやる」と言ったとき、あなたは、それに納得するでしょうか。

あなたは「子どもは、家族だ」「兄弟だ」「同じ親子だ」と言うかもしれませんが、それはおとなの
論理にすぎないということです。

 本来なら、長男は、弟を、蹴とばして、外へ追い出したい。しかしそれができない。それをす
れば、自分の立場がなくなってしまう。

 つまりこの問題の奥には、そうした長男の複雑な、つまりはゆがんだ心理があるということで
す。

 そこで対処のし方としては、もう一度、全面的に、長男へのスキンシップ、暖かい愛情を取り
もどします。7歳という年齢から、赤ちゃんがえりはないと思いますが、それに似た、幼児がえり
は、あるかもしれません。何かにつけて、わけのわからないことを言ってぐずるようなら、添い
寝、手つなぎ、一緒の入浴などを、子どもが求めてきたら、ていねいに応じてあげます。

 (1)暖かい無視と、(2)ほどよい親に心がけます。

 「ほどよい親」というのは、「求めてきたときが、与えどき」ということです。長男が、スキンシッ
プを求めるようなしぐさを見せたら、ていねいに、こまめにそれに応じてあげます。数分間程
度、ぐいと抱くだけでも、効果的です。

 決して、「お兄ちゃんだから……」と、ダカラ論で、長男を、突き放してはいけません。子どもに
上下をつけないで、同じ子どもとして扱います。そしてこの際、弟さんには、少しがまんしてもら
います。ここで長男の心をいじけさせると、ひがみやすくなる(依存型)、いじけやすくなる(同情
型)、つっぱりやすくなる(攻撃型)などの症状が出てくるようになります。(すでに出ているようで
すが……。)

 能力的な劣等感は、従って、弟が原因ではありません。それをわからせる、家庭の雰囲気と
いうか、親の態度、姿勢にあります。どこかで、「お兄ちゃんのクセに……」とか、「弟に負ける
なんて……」という雰囲気があるのではありませんか? もしそうなら、これはやはり、長男の
心の問題ではなく、親の育児姿勢の問題ということになります。

 というのも、これから先、この種の劣等感(反対に優越感も)は、いつも子どもの心を襲いま
す。たまたま今は、兄弟という関係の中で、起きているだけです。親としてはつらいところです
が、「あなたはよくがんばっている」式に、子どもの立場で、それをなぐさめてあげるしかありま
せん。

 で、こうしたプロセスを経て、子どもはやさしく、かつたくましくなっていきます。今の段階では、
まず、あなた自身が、兄弟の上下意識をもたないこと。(そういう意味では、あなたは、かなり、
上下意識の強い親かもしれません。)

 そういう上下意識を無意識のうちに感じながら、上の長男が、それを劣等感にしてしまいま
す。そしてその一方で、弟が、ライバル意識から、兄への優越感。さらには、兄をバカにする…
…というふうに転化してしまったら、それこそ家庭教育の失敗ということになります。

 いろいろなことが考えられますが、しかし全体としてみると、実によくある問題であり、かつ、
何でもない問題の部類に属する問題です。しかも、弟さんの立場で考えるなら、どこかぜいたく
な悩みということになるかもしれません。

 ですから、あまり深刻に考えないで、ここに書いたことを参考に、対処してみてください。で、
それで兄弟の仲が悪くなっても、しかたのないこと。(これもよくあるケースです。)

 また兄が、弟をいじめたり、嫌ったりするのも、これまたしかたのないこと。(これもよくあるケ
ースです。)

 完ぺきな兄弟関係を、求めないこと。このあたりは、もう成りゆきに任せるしかないと思いま
す。子どもというより、ある2、3年もすると、あなたの子どもたちも、親離れを始め、自己意識
も育ち、一人の人間として、自立していきます。親として、介入できることにも、限界があるとい
うことです。こういうケースでは、長男のよき相談相手、アドバイザーとして、親が一歩退く。そ
れが結局は、子離れということになります。

 だからとりあえずの方法としては、兄・弟という上下意識を、まず、とりのぞき、二人の子ども
を、「友」として位置づけてみては、どうでしょうか。(まあ、年齢的に、少しむずかしいかもしれ
ませんが……。やや、手遅れ的な部分も、あるということです。)

 そのあとの人間関係は、二人の子どもに任せます。あなたの周辺にも、仲のよい兄弟おいれ
ば、そうでない兄弟もいるはずです。どうなるかは、もう、子どもたち自身が決めることだという
ことです。(それとも、あなた自身は、あなたの兄弟と、仲がよく、今でも、良好な人間関係を保
っていますか?)

 この問題は、そういう視点からも、考えます。

 最後に、自信を回復させる方法としては、一芸論などがあります。「はやし浩司 一芸論」で
検索してくださると、どこかでヒットするはずです。Tさんのケースでは、長男には、二男とは別
の一芸をもたせたほうがよいかもしれませんね。

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参考までに……

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●「これだけは絶対に人に負けない」・子どもの一芸論

 Sさん(中一)もT君(小三)も、勉強はまったくダメだったが、Sさんは、手芸で、T君は、スケ
ートで、それぞれ、自分を光らせていた。

中に「勉強、一本!」という子どももいるが、このタイプの子どもは、一度勉強でつまずくと、あと
は坂をころげ落ちるように、成績がさがる。そういうときのため、……というだけではないが、子
どもには一芸をもたせる。この一芸が、子どもを側面から支える。あるいはその一芸が、その
子どもの身を立てることもある。

 M君は高校へ入るころから、不登校を繰り返し、やがて学校へはほとんど行かなくなってしま
った。そしてその間、時間をつぶすため、近くの公園でゴルフばかりしていた。が、一〇年後。
ひょっこり私の家にやってきて、こう言って私を驚かせた。「先生、ぼくのほうが先生より、お金
を稼いでいるよね」と。彼はゴルフのプロコーチになっていた。

 この一芸は作るものではなく、見つけるもの。親が無理に作ろうとしても、たいてい失敗する。
Eさん(二歳児)は、風呂に入っても、平気でお湯の中にもぐって遊んでいた。そこで母親が、
「水泳の才能があるのでは」と思い、水泳教室へ入れてみた。案の定、Eさんは水泳ですぐれ
た才能を見せ、中学二年のときには、全国大会に出場するまでに成長した。S君(年長児)も
そうだ。

父親が新車を買ったときのこと。S君は車のスイッチに興味をもち、「これは何だ、これは何だ」
と。そこで母親から私に相談があったので、私はS君にパソコンを買ってあげることを勧めた。
パソコンはスイッチのかたまりのようなものだ。その後S君は、小学三年生のころには、ベーシ
ック言語を、中学一年生のころには、C言語をマスターするまでになった。

 この一芸。親は聖域と考えること。よく「成績がさがったから、(好きな)サッカーをやめさせ
る」と言う親がいる。しかし実際には、サッカーをやめさせればやめさせたで、成績は、もっとさ
がる。一芸というのは、そういうもの。ただし、テレビゲームがうまいとか、カードをたくさん集め
ているというのは、一芸ではない。

ここでいう一芸というのは、集団の中で光り、かつ未来に向かって創造的なものをいう。「創造
的なもの」というのは、努力によって、技や内容が磨かれるものという意味である。

そしてここが大切だが、子どもの中に一芸を見つけたら、時間とお金をたっぷりとかける。そう
いう思いっきりのよさが、子どもの一芸を伸ばす。「誰が見ても、この分野に関しては、あいつし
かいない」という状態にする。子どもの立場で言うなら、「これだけは絶対に人に負けない」とい
う状態にする。

 一芸、つまり才能と言いかえてもいいが、その一芸を見つけるのは、乳幼児期から四、五歳
ごろまでが勝負。この時期、子どもがどんなことに興味をもち、どんなことをするかを静かに観
察する。一見、くだらないことのように見えることでも、その中に、すばらしい才能が隠されてい
ることもある。それを判断するのも、家庭教育の大切な役目の一つである。  
(はやし浩司 兄弟の確執 ライバル意識 一芸論)

【付録】

●長子は神経質?

 なお神経質な子どもに関して、こんな興味深いデータがある。東海大学医学部の逢坂文夫氏
らの調査によると、「一番上の子は、下の子よりも神経質」というのだ。

 東京都内の保育園に通う1000人の園児の母親について調べたところ、次のようなことがわ
かったという。

 母親がわが子を神経質と認めた割合は、弟や妹をもつ長子についてがもっとも多く、42・
7%。

これに比べて、一人っ子は、35・1%、第二子は23・7%、第三子以降は、15・8%(母親の
平均年齢は、32・6歳。園児の平均年齢は3・8歳)。「兄弟姉妹の下のほうになるほど、のん
びり屋さんになるようだ」(中日新聞コメント)と。

 また「緊張しやすい」とされた長子の割合も、第二子の約1・5倍だったという。長子ほど、心
理的に不安定な傾向がうかがえる。これらの調査結果からわかることは、子どもが神経質にな
るかどうかということは、生まれつきの性質による部分も無視できないが、生まれてからの環
境にもよる部分も大きいということである。


●子どもの問題・・・子どもに関する問題 ●親子の問題・・・親子に関する問題
●家庭の問題・・・夫婦家族に関する問題 ●その他・・・その他の問題


情報・画像の出展:はやし浩司先生

※このページの文章・及び画像の著作権は「はやし浩司」様が保有しています。
当サイトでは「はやし浩司」様のご厚意により許可を得て掲載させていただいております。


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