「(今)を知らない子どもたち」 はやし浩司先生の育児・教育指導
私の知人がこう言った。
「退職したら、Tさんと2人で、車で日本一周をするつもりです」と。しかし私はその話を聞いたとき、「ではなぜ、今しないのか?」と思った。
日本人は仏教というよりチベット密教の影響を強く受けているから、「結果」を重要視する。「死に顔でその人の生涯が決まる」と教えている日本最大の宗教教団すらある。
しかし大切なのは、結果ではなく、「今」だ。が、それだけではない。
こうした結果を大切にする考え方は、日本人の生き方そのものにも大きな影響を与えている。
その一つが、「未来」のためにいつも「今」を犠牲にするという生き方。
たとえば幼稚園は小学校入学のため、小学校は中学校や高校の入学のため、さらに高校は大学入試のため、大学は就職するためと考える親は多い。
そう考えるのは親の勝手だとしても、子どももまた、そういう生き方を身につけてしまう。
そしていつまでたっても「今」がつかめなくなる。しかしそれは愚かな生き方そのもの。
イギリスには、『休息を求めて疲れる』という格言がある。
「いつか楽になろう、なろうと思ってがんばっているうちに、疲れてしまい何もできなくなる」という意味である。
一度こういう生き方のパターンができてしまうと、それを変えるのは容易ではない。
そのまま一生つづくと言ってもよい。
その一例として、休暇の過ごし方がある。たとえば今、10日間の休暇が与えられたとする。そういうとき欧米の人なら、その「時」をそのまま楽しむ。……楽しむことができる。
しかし日本人は、休暇中は今度は、休暇が終わってからの仕事を考える。
子どももそうだ。子どもが学校から3日間の休日を与えられたとする。
そして子どもが家でブラブラしていたとする。すると親はそれを見て不安に思ったりする。「こんなことでいいの!」と。つまり日本人は休みを休みとして楽しむことすらできない。
別の友人はこう言った。
「10日も休みをもらっても、過ごし方がわらない」と。こうした生き方は、よく「仕事中毒」という言葉で説明されるが、そんな簡単なことではない。根は深い。
さて冒頭の話だが、私はその知人は、退職後、日本一周の旅には出ないと思う。
しても旅から帰ったあとの老後の話ばかりすると思う。それはちょうど試験週間の学生のようなものだ。
試験中というのは、ほとんどの学生は「試験が終わったら映画を見にいこう」とか、「旅行しよう」とか考えるが、いざ試験が終わると、何もしたくなくなる。
あなたにもそういう経験があると思うが、抑圧された環境の中では夢だけがひとり歩きする。
しかしその抑圧から解放されると、同時に夢も消える。
いや、その前に健康がそれまで続くかどうかさえわからない。命だってあぶない。そんなあやふやな「未来」に夢を託してはいけない。
夢があるなら、条件をつけないで、「今」始めることだ。繰り返すが、結果は必ずあとからついてくる。
はやし浩司先生の育児・幼児教育コーナー4
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【はやし浩司先生のプロフィール】
1947年岐阜県生まれ。
金沢大学法文学部法学科卒業。
日豪経済員会給費留学生として、オーストラリアメルボン大学ロースクール(法学院)研究生、三井物産社員、幼稚園教師を経て、浜松市にてBW(ブレイン・ワーク)教室、幼児研究所を設立。
独自の哲学・教育論をもとに幼児教育の実践を行っています。
現在は教育評論家として、ホームページやブログ、メルマガ、ユーチューブ等を利用しながら執筆活動に専念しています。
●著書に「子育て最前線のあなたへ」(中日新聞社)、「おかしな時代のまともな子育て論」(リヨン社・2002年3月発行)、「ドラえもん野比家の子育て論」(創芸社)など、30冊余り。
うち4冊は中国語にも翻訳出版されています。
「まなぶくん幼児教室」(学研)、「ハローワールド」(創刊企画・学研)などの無数の市販教材も手がけ、東洋医学、宗教論の著書も計8冊出版されています。
●教育評論家、現在浜松市伝馬町でBW教室主催。
●現在は、インターネットを中心に活動中。
メルマガ・オブ・ザ・イヤー受賞(08)、
電子マガジン読者数・計3000人(09)、ほか。
「BW公開教室」を、HP上にて、公開中。
(HPへは、「はやし浩司」で検索、「最前線の子育て論byはやし浩司」より。)
過去の代表的な著書
・・・などなど30冊余り出版されています。