「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」 はやし浩司先生の育児・教育指導
「臥薪嘗胆」というよく知られた言葉がある。
この言葉は「父のカタキを忘れないために、呉王の子の夫差(ふさ)が薪(まき)の上に寝、一方、それで敗れた越王の勾践(こうせん)が、やはりその悔しさを忘れないために熊のキモをなめた」という故事から生まれた。
「目的を遂げるために長期にわたって苦労を重ねること」という意味に、広く使われている。しかし私はこの言葉を別の意味に使っている。
私は若いころからずっと、下積みの生活をしてきた。
自分では下積みとは思っていなくても、世間は私をそういう目で見ていた。
私の教育論は、そういう下積みの中から生まれた。
言い換えると、そのときの生活を忘れて、私の教育論はありえない。で、いつも私はそのころの自分を基準にして、自分の教育論を組み立てている。
つまりいつもそのころを思い出しながら、自分の教育論を書くようにしている。それを思いださせてくれるのが、自転車通勤。
この自転車という乗り物は、道路では、最下層の乗り物である。
たとえ私はそう思っていなくても、自動車に乗っている人から見ればジャマモノであり、一方、車と接触すれば、それで万事休す。
「命がけ」というのは大げさだが、しかしそれだけに道路では小さくなっていなければならない。
その上、私が通勤しているY街道は、歩道と言っても、道路のスミにかかれた白線の外側。側溝のフタの上。
電柱や標識と民家の塀の間を、スルリスルリと抜けながら走らなければならない。
しかしこれが私の原点である。
たとえばどこか大きな会場で講演に行ったりすると、たいていはグリーン車を用意してくれ、駅には車が待っていてくれたりする。
VIPに扱ってもらうのは、それなりに楽しいものだが、しかしそんな生活をときどきでもしていると、いつか自分が自分でなくなってしまう。が、モノを書く人間にとっては、これほど恐ろしいものはない。
私が知っている人の中でも、有名になり、金持ちになり、それに合わせて傲慢になり、自分を見失ってしまった人はいくらでもいる。
そういう人たちの見苦しさを私は知っているから、そういう人間だけにはなりたくないといつも思っている。
仮に私がそういう人間になれば、それは私の否定ということになる。
もっと言えば、人生の敗北を認めるようなもの。
だからそれだけは何としても避けなければならない。
そういう自分に戻してくれるのが、自転車通勤ということになる。
私は道路のスミを小さくなりながら走ることで、あの下積みの時代の自分を思い出すことができる。
つまりそれが私にとっての、「臥薪嘗胆」ということになる。
私はときどきタクシーの運転手たちに、「バカヤロー」と怒鳴られることがある。
しかしそのたびに、「ああ、これが私の原点だ」と思いなおすようにしている。
●依存性の二つの側面 | ●親は子で目立つ |
●赤ちゃん言葉 | ●臥薪嘗胆(がしんしょうたん) |
●依存心と人格 | ●親は外に大きく |
●心の風邪……いかにして「無」になるか | ●互いに別世界 |
●自分を知る | ●バカなフリをして、子どもを自立させる |
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【はやし浩司先生のプロフィール】
1947年岐阜県生まれ。
金沢大学法文学部法学科卒業。
日豪経済員会給費留学生として、オーストラリアメルボン大学ロースクール(法学院)研究生、三井物産社員、幼稚園教師を経て、浜松市にてBW(ブレイン・ワーク)教室、幼児研究所を設立。
独自の哲学・教育論をもとに幼児教育の実践を行っています。
現在は教育評論家として、ホームページやブログ、メルマガ、ユーチューブ等を利用しながら執筆活動に専念しています。
●著書に「子育て最前線のあなたへ」(中日新聞社)、「おかしな時代のまともな子育て論」(リヨン社・2002年3月発行)、「ドラえもん野比家の子育て論」(創芸社)など、30冊余り。
うち4冊は中国語にも翻訳出版されています。
「まなぶくん幼児教室」(学研)、「ハローワールド」(創刊企画・学研)などの無数の市販教材も手がけ、東洋医学、宗教論の著書も計8冊出版されています。
●教育評論家、現在浜松市伝馬町でBW教室主催。
●現在は、インターネットを中心に活動中。
メルマガ・オブ・ザ・イヤー受賞(08)、
電子マガジン読者数・計3000人(09)、ほか。
「BW公開教室」を、HP上にて、公開中。
(HPへは、「はやし浩司」で検索、「最前線の子育て論byはやし浩司」より。)
過去の代表的な著書
・・・などなど30冊余り出版されています。