「上見てきりなし」 はやし浩司先生の育児・教育指導
戦前の教科書に載っていた説話らしい。
『上見てきりなし、下見てきりなし』といった。つまり人というのは、上ばかり見ていると、その欲望や不満は際限なくつづき、安穏たる日々はやってこない。
一方、下には下に、自分より不幸な人はいくらでもいるから、最後の最後まで夢や希望は捨ててはいけない、と。
「なるほど……」と思いたいが、この格言はどこかおかしい。
人にあきらめと慰めを同時に教えながら、その実、幸福感や価値観に「上下」の差別をつけている。
「上とは何か」「下とは何か」ということをはっきりさせないまま、この格言をそのまま鵜呑みにするのは危険なことでもある。
あるいは「上を見て何が悪い」「下とは何だ。失敬ではないか」と言われたら、あなたはどう反論するのか。
それはさておき、子どもに何か大きな問題が生じたときは、子どもは、「下から見る」。
「下(欠点や弱点)を見ろ」というのではない。「下から見る」。
子どもが生きているという原点から子どもを見る。
するとほぼありとあらゆる問題が、その場で解決するから不思議である。いや、私とて、何度かこの言葉に救われたことか。
だいたいにおいて、親の悩みや苦しみなどというものは、「上」から見るから始まる。
「何とかならないか」「もっと何とかしたい」「まだ何とかなる」「何とかしなければならない」と。
しかしその視点を一転させ、「私は生きている」「子どもも生きている」「生きていること自体が奇跡だ」「生きることはすばらしいことだ」という視点で見ると、ものの考え方が180度変わる。
そしてそれまでの自分が、小さな世界で右も左もわからず右往左往していたのに気づく。
とくに私の二男は、一度海でおぼれて死にかけたことがある。
今、二男が生きていることだけでも奇跡のようなものだ。そういう視点でみると、「不登校が何だ」「進学が何だ」となる。
それは決してあきらめろと言っているのではない。
人というのは、自分たちがつくりあげたバーチャルな世界で、本来大切でないものを大切と思い込み、本来大切なものを、大切でないと粗末にすることが多い。
「下」からその人間社会をみると、本来、何が大切で、何が大切でないかがよくわかる。それに気づく。
そういう意味で、「子どもは下から見る」。
あなたもあなたの子育てで、どこか行きづまったら、この格言を思い出してみてほしい。
心が必ず楽になるはずである。
はやし浩司先生の育児・幼児教育コーナー10
NO’217〜NO’240
●新居の関所 | ●一芸論 |
●便利な世界 | ●一芸は聖域 |
●案ずるより産むがやすし | ●フリ勉、ダラ勉、時間ツブシ |
●威圧で閉じる子どもの耳 | ●勉強が苦手な子ども |
●よい子論 | ●「今」の価値を忘れない |
●子どもの家出 | ●ええじゃないか |
●現場主義 | ●子どもの創造力 |
●子どもの意地 | ●習うより慣れる |
●子どもの自我 | ●子どもの嫉妬 |
●いじめられっ子は徳をつむ? | ●子どもの闘争心 |
●ホームスクール | ●権威主義者 |
●いたずらとジョーク | ●無限ループの世界 |
NO’1〜NO’24 | NO’73〜NO’96 | NO’145〜NO’168 |
NO’25〜NO’48 | NO’97〜NO’120 | NO’169〜NO’192 |
NO’49〜NO’72 | NO’121〜NO’144 | NO’193〜NO’216 |
NO’217〜NO’240 | NO’241〜NO’264 | NO’265〜NO’282 |
NO’283〜NO’292 |
情報・画像の出展:はやし浩司先生
※このページの文章・及び画像の著作権は「はやし浩司」様が保有しています。
当サイトでは「はやし浩司」様のご厚意により許可を得て掲載させていただいております。
【はやし浩司先生のプロフィール】
1947年岐阜県生まれ。
金沢大学法文学部法学科卒業。
日豪経済員会給費留学生として、オーストラリアメルボン大学ロースクール(法学院)研究生、三井物産社員、幼稚園教師を経て、浜松市にてBW(ブレイン・ワーク)教室、幼児研究所を設立。
独自の哲学・教育論をもとに幼児教育の実践を行っています。
現在は教育評論家として、ホームページやブログ、メルマガ、ユーチューブ等を利用しながら執筆活動に専念しています。
●著書に「子育て最前線のあなたへ」(中日新聞社)、「おかしな時代のまともな子育て論」(リヨン社・2002年3月発行)、「ドラえもん野比家の子育て論」(創芸社)など、30冊余り。
うち4冊は中国語にも翻訳出版されています。
「まなぶくん幼児教室」(学研)、「ハローワールド」(創刊企画・学研)などの無数の市販教材も手がけ、東洋医学、宗教論の著書も計8冊出版されています。
●教育評論家、現在浜松市伝馬町でBW教室主催。
●現在は、インターネットを中心に活動中。
メルマガ・オブ・ザ・イヤー受賞(08)、
電子マガジン読者数・計3000人(09)、ほか。
「BW公開教室」を、HP上にて、公開中。
(HPへは、「はやし浩司」で検索、「最前線の子育て論byはやし浩司」より。)
過去の代表的な著書
・・・などなど30冊余り出版されています。