「無限ループの世界」 はやし浩司先生の育児・教育指導
思考するということには、ある種の苦痛がともなう。
それはちょうど難解な数学の問題を解くようなものだ。できれば思考などしなくてすましたい。
それがおおかたの人の「思い」ではないか。
が、思考するからこそ、人間である。
パスカルも「パンセ」の中で、「思考が人間の偉大さをなす」と書いている。
しかし今、思考と知識、さらには情報が混同して使われている。
知識や情報の多い人を、賢い人と誤解している人さえいる。
その思考。人間もある年齢に達すると、その思考を停止し、無限のループ状態に入る。
「その年齢」というのは、個人差があって、一概に何歳とは言えない。
20歳でループに入る人もいれば、50歳や60歳になっても入らない人もいる。
「ループ状態」というのは、そこで進歩を止め、同じ思考を繰り返すことをいう。
こういう状態になると、思考力はさらに低下する。私はこのことを講演活動をつづけていて発見した。
講演というのは、ある意味で楽な仕事だ。
会場や聴衆は毎回変わるから、同じ話をすればよい。
しかし私は会場ごとに、できるだけ違った話をするようにしている。
これは私が子どもたちに接するときもそうだ。毎年、それぞれの年齢の子どもに接するが、「同じ授業はしない」というのを、モットーにしている。(そう言いながら、結構、同じ授業をしているが……。)で、ある日のこと。
たしか過保護児の話をしていたときのこと。
私はふとその話を、講演の途中で、それをさかのぼること20年程前にどこかでしたのを思い出した。
とたん、何とも言えない敗北感を感じた。「私はこの二〇年間、何をしてきたのだろう」と。
そこであなたはどうだろうか。
最近話す話は、10年前より進歩しただろうか。20年前より進歩しただろうか。あるいは違った話をしているだろうか。それを心のどこかで考えてみてほしい。
さらにあなたはこの10年間で何か新しい発見をしただろうか。それともしなかっただろうか。
こわいのは、思考のループに入ってしまい、10年一律のごとく、同じ話を繰り返すことだ。
もうこうなると、進歩など、望むべくもない。それがわからなければ、犬を見ればよい(失礼!)。
犬は犬なりに知識や経験もあり、ひょっとしたら人間より賢い部分をもっている。
しかし犬が犬なのは、思考力はあっても、いつも思考の無限ループの中に入ってしまうことだ。
だから犬は犬のまま、その思考を進歩させることができない。
もしあなたが、いつかどこかで話したのと同じ話を、今日もだれかとしたというのなら、あなたはすでにその思考の無限ループの中に入っているとみてよい。もしそうなら、今日からでも遅くないから、そのループから抜け出してみる。
方法は簡単だ。何かテーマを決めて、そのテーマについて考え、自分なりの結論を出す。
そしてそれをどんどん繰り返していく。どんどん繰り返して、それを積み重ねていく。それで脱出できる。
はやし浩司先生の育児・幼児教育コーナー10
NO’217〜NO’240
●新居の関所 | ●一芸論 |
●便利な世界 | ●一芸は聖域 |
●案ずるより産むがやすし | ●フリ勉、ダラ勉、時間ツブシ |
●威圧で閉じる子どもの耳 | ●勉強が苦手な子ども |
●よい子論 | ●「今」の価値を忘れない |
●子どもの家出 | ●ええじゃないか |
●現場主義 | ●子どもの創造力 |
●子どもの意地 | ●習うより慣れる |
●子どもの自我 | ●子どもの嫉妬 |
●いじめられっ子は徳をつむ? | ●子どもの闘争心 |
●ホームスクール | ●権威主義者 |
●いたずらとジョーク | ●無限ループの世界 |
NO’1〜NO’24 | NO’73〜NO’96 | NO’145〜NO’168 |
NO’25〜NO’48 | NO’97〜NO’120 | NO’169〜NO’192 |
NO’49〜NO’72 | NO’121〜NO’144 | NO’193〜NO’216 |
NO’217〜NO’240 | NO’241〜NO’264 | NO’265〜NO’282 |
NO’283〜NO’292 |
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【はやし浩司先生のプロフィール】
1947年岐阜県生まれ。
金沢大学法文学部法学科卒業。
日豪経済員会給費留学生として、オーストラリアメルボン大学ロースクール(法学院)研究生、三井物産社員、幼稚園教師を経て、浜松市にてBW(ブレイン・ワーク)教室、幼児研究所を設立。
独自の哲学・教育論をもとに幼児教育の実践を行っています。
現在は教育評論家として、ホームページやブログ、メルマガ、ユーチューブ等を利用しながら執筆活動に専念しています。
●著書に「子育て最前線のあなたへ」(中日新聞社)、「おかしな時代のまともな子育て論」(リヨン社・2002年3月発行)、「ドラえもん野比家の子育て論」(創芸社)など、30冊余り。
うち4冊は中国語にも翻訳出版されています。
「まなぶくん幼児教室」(学研)、「ハローワールド」(創刊企画・学研)などの無数の市販教材も手がけ、東洋医学、宗教論の著書も計8冊出版されています。
●教育評論家、現在浜松市伝馬町でBW教室主催。
●現在は、インターネットを中心に活動中。
メルマガ・オブ・ザ・イヤー受賞(08)、
電子マガジン読者数・計3000人(09)、ほか。
「BW公開教室」を、HP上にて、公開中。
(HPへは、「はやし浩司」で検索、「最前線の子育て論byはやし浩司」より。)
過去の代表的な著書
・・・などなど30冊余り出版されています。