「習うより慣れる」 はやし浩司先生の育児・教育指導
私の三男は、人前で話をするのが苦手だった。
しかしその三男が児童会の会長に選ばれ、宿泊訓練の場であいさつをすることになったときのこと。
三男はその数日前から食事もしなくなり、当日も睡眠不足でフラフラの状態でその訓練にでかけていった。結果、それなりにうまくできたのだろう。
以後、人前で話すのが平気になってしまったようだ。
つまりそういう積み重ねをしながら、子どもは成長していく。私も実のところ子どものころ、人前で話すのが得意ではなかった。
大学生のときもそうだった。好きか嫌いかと問われれば、好きではなかった。英語でいえば、ナーバス、つまりあがり症だった。が、その私がこわいもの知らずになったのには、理由がある。
今の私はどんな場に出ても、おじけづくということはない。
相手が総理大臣でも、多分、平気で話ができるとだろうと思う。
その理由としては、学生時代、オーストラリアのメルボルン大学で幸運にも、そういう人たちに囲まれて生活したという体験がある。各国の元首や外務大臣たちが毎週のように晩餐会に来たし、ノーベル賞級の研究者たちも、数週間単位でよくとまっていった。
日本の政治家もよくきた。
そういう中で私は学生という身分ではあったが、「頂点」をその時点で見てしまった。
ただそのあと、日本へ帰ってきてから、私は社会的にも経済的にもどん底状態にほうりこまれ、そのギャップに苦しむことになったが、それはそれとして、人生全体で総決算するなら、幸運だったということになる。
自分では絵を描かないが、絵の鑑定士としては、最高の作品がどういうものであるかくらいは、わかるようになった。
要するに習うより慣れろということだが、人というのは、一つずつ階段をのぼるようにして、成長していく。
そのときどきでは苦しい思いはするが、その思いをしながら、つぎのステップへと進んでいく。
たいていの人はその苦しさに耐えかねて、その段階でつぎのステップに進むのを放棄してしまう。(私も偉そうなことは言えないが……。)
もっともそれが自分のことであれば、それを判断するのは自分の勝手だが、今まさに伸びていこうとする子どもについては、親として別の考え方をしなければならない。
子どもが伸びていくのをみるのは楽しみなことであるのと同時に、結構、つらいことでもあるということ。
とくに子どもが苦しんでいるときはそうだ。つい、「そんなにがんばらなくてもいい」と言いそうになるときもある。
三男が宿泊訓練に行くときもそうだった。
学校の先生に、「会長をもう辞退させてやってほしい」と、ほとんど手紙を出す寸前のところまで私と女房は追い込まれた。
もっとも三男が成長したというよりは、私たち夫婦が、三男によって成長させられたというのが正しいかもしれない。そのあと同じようなことがあるたびに、私たち夫婦もまた、平気でそれを乗り越えることができるようになった。
はやし浩司先生の育児・幼児教育コーナー10
NO’217〜NO’240
●新居の関所 | ●一芸論 |
●便利な世界 | ●一芸は聖域 |
●案ずるより産むがやすし | ●フリ勉、ダラ勉、時間ツブシ |
●威圧で閉じる子どもの耳 | ●勉強が苦手な子ども |
●よい子論 | ●「今」の価値を忘れない |
●子どもの家出 | ●ええじゃないか |
●現場主義 | ●子どもの創造力 |
●子どもの意地 | ●習うより慣れる |
●子どもの自我 | ●子どもの嫉妬 |
●いじめられっ子は徳をつむ? | ●子どもの闘争心 |
●ホームスクール | ●権威主義者 |
●いたずらとジョーク | ●無限ループの世界 |
NO’1〜NO’24 | NO’73〜NO’96 | NO’145〜NO’168 |
NO’25〜NO’48 | NO’97〜NO’120 | NO’169〜NO’192 |
NO’49〜NO’72 | NO’121〜NO’144 | NO’193〜NO’216 |
NO’217〜NO’240 | NO’241〜NO’264 | NO’265〜NO’282 |
NO’283〜NO’292 |
情報・画像の出展:はやし浩司先生
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【はやし浩司先生のプロフィール】
1947年岐阜県生まれ。
金沢大学法文学部法学科卒業。
日豪経済員会給費留学生として、オーストラリアメルボン大学ロースクール(法学院)研究生、三井物産社員、幼稚園教師を経て、浜松市にてBW(ブレイン・ワーク)教室、幼児研究所を設立。
独自の哲学・教育論をもとに幼児教育の実践を行っています。
現在は教育評論家として、ホームページやブログ、メルマガ、ユーチューブ等を利用しながら執筆活動に専念しています。
●著書に「子育て最前線のあなたへ」(中日新聞社)、「おかしな時代のまともな子育て論」(リヨン社・2002年3月発行)、「ドラえもん野比家の子育て論」(創芸社)など、30冊余り。
うち4冊は中国語にも翻訳出版されています。
「まなぶくん幼児教室」(学研)、「ハローワールド」(創刊企画・学研)などの無数の市販教材も手がけ、東洋医学、宗教論の著書も計8冊出版されています。
●教育評論家、現在浜松市伝馬町でBW教室主催。
●現在は、インターネットを中心に活動中。
メルマガ・オブ・ザ・イヤー受賞(08)、
電子マガジン読者数・計3000人(09)、ほか。
「BW公開教室」を、HP上にて、公開中。
(HPへは、「はやし浩司」で検索、「最前線の子育て論byはやし浩司」より。)
過去の代表的な著書
・・・などなど30冊余り出版されています。