「子どもの創造力」 はやし浩司先生の育児・教育指導
2002年の3月、「サイエンス」におもしろい研究結果が載った。
何でもギャンブルで負けたりすると、「頭が熱くなる」ということが、科学的に実証されたというのだ。
アメリカ・ミシガン大学のW・ゲーリング博士らの研究によると、「勝敗の表示から、平均0・265秒後から、脳の前頭葉皮質部から、強い神経系処理信号が出る」という。
しかもそれは「勝ったときよりも、負けたときのほうが信号が強く出る傾向があった」というのだ。私はこの論文を読んで、別のことを考えた。
よく子どもの創造力が話題になる。
「子どもの創造力を育てるにはどうしたらいいか」と。もちろん環境や教育によるところも大きいが、それだけでは足りない。
人というのは、追いつめられ、崖っぷちに立たされてはじめて、自分の能力をふるい立たせることができる。創造力もそこから生まれる。
反対に、水温が調整され、酸素もエサも自動的に与えられるような環境では、伸びる芽そのものが出てこない。伸びる力も育たない。
たとえば私のことだが、今までに何度か幼児教育から足を洗おうと思ったことがある。
収入ということを考えるなら、もっとお金になる仕事はほかにいくらでもある。
しかしそのたびに、「今までの経験を文にまとめたい」という強い願いが私を襲った。
それは文を書くという甘いものではなく、もっと切羽つまったものだったような気がする。
だからこそ文を書き、それを本にすることができた。(ひょっとしたら、今もそうかもしれない。体力的な衰えを感ずる今、年齢的にその崖っぷちに立たされているような気がする。)
つまり勝負で負けると、前頭葉皮質部からの信号が強くなることからもわかるように、追いこまれると、それまで活動していなかった脳の機能が全開状態になる(?)。
そしてそれが何とかしなければならないという生活上の必要性とあいまって、新しい創造力へとつながっていく……。
もちろんこれは私の推論でしかない。
しかし経験上、それを裏づけるような話はいくらでもある。たとえばベートーベンにせよ、もし彼が満ち足りた裕福な生活をしていたら、あの第九交響楽ができたかどうかは疑わしい。
言いかえると、子どもの能力を引き出すためには、子どももある程度は、崖っぷちに立たせねばならない。
具体的には子どもはいつもややハングリーな状態におく。
与えすぎややりすぎは、かえって子どもの伸びる芽をつんでしまうこと。どこか不満足な状態をつくりながら、それをうまく利用しながら子どもを伸ばす。
まとまりのない話になってしまったが、サイエンスの論文を見ながら、そんなことを考えた。
はやし浩司先生の育児・幼児教育コーナー10
NO’217〜NO’240
●新居の関所 | ●一芸論 |
●便利な世界 | ●一芸は聖域 |
●案ずるより産むがやすし | ●フリ勉、ダラ勉、時間ツブシ |
●威圧で閉じる子どもの耳 | ●勉強が苦手な子ども |
●よい子論 | ●「今」の価値を忘れない |
●子どもの家出 | ●ええじゃないか |
●現場主義 | ●子どもの創造力 |
●子どもの意地 | ●習うより慣れる |
●子どもの自我 | ●子どもの嫉妬 |
●いじめられっ子は徳をつむ? | ●子どもの闘争心 |
●ホームスクール | ●権威主義者 |
●いたずらとジョーク | ●無限ループの世界 |
NO’1〜NO’24 | NO’73〜NO’96 | NO’145〜NO’168 |
NO’25〜NO’48 | NO’97〜NO’120 | NO’169〜NO’192 |
NO’49〜NO’72 | NO’121〜NO’144 | NO’193〜NO’216 |
NO’217〜NO’240 | NO’241〜NO’264 | NO’265〜NO’282 |
NO’283〜NO’292 |
情報・画像の出展:はやし浩司先生
※このページの文章・及び画像の著作権は「はやし浩司」様が保有しています。
当サイトでは「はやし浩司」様のご厚意により許可を得て掲載させていただいております。
【はやし浩司先生のプロフィール】
1947年岐阜県生まれ。
金沢大学法文学部法学科卒業。
日豪経済員会給費留学生として、オーストラリアメルボン大学ロースクール(法学院)研究生、三井物産社員、幼稚園教師を経て、浜松市にてBW(ブレイン・ワーク)教室、幼児研究所を設立。
独自の哲学・教育論をもとに幼児教育の実践を行っています。
現在は教育評論家として、ホームページやブログ、メルマガ、ユーチューブ等を利用しながら執筆活動に専念しています。
●著書に「子育て最前線のあなたへ」(中日新聞社)、「おかしな時代のまともな子育て論」(リヨン社・2002年3月発行)、「ドラえもん野比家の子育て論」(創芸社)など、30冊余り。
うち4冊は中国語にも翻訳出版されています。
「まなぶくん幼児教室」(学研)、「ハローワールド」(創刊企画・学研)などの無数の市販教材も手がけ、東洋医学、宗教論の著書も計8冊出版されています。
●教育評論家、現在浜松市伝馬町でBW教室主催。
●現在は、インターネットを中心に活動中。
メルマガ・オブ・ザ・イヤー受賞(08)、
電子マガジン読者数・計3000人(09)、ほか。
「BW公開教室」を、HP上にて、公開中。
(HPへは、「はやし浩司」で検索、「最前線の子育て論byはやし浩司」より。)
過去の代表的な著書
・・・などなど30冊余り出版されています。