「新居の関所」 はやし浩司先生の育児・教育指導
浜名湖の南西にある新居町には、新居関所がある。
関所の中でも唯一現存する関所ということだが、それほど大きさを感じさせない関所である。
江戸時代という時代のスケールがそのまま反映されていると考えてよいが、驚くのは、その「きびしさ」。
関所破りがいかに重罪であったかは、かかげられた史料を読めばわかる。
つかまれば死罪だが、その関所破りを助けたものも同程度の罪が科せられた。
新居の関所破りをして、伊豆でつかまった男は、死体を塩漬けにして新居までもどされ、そこでさらにはりつけに処せられたという記録も残っている。
移動の自由がいかにきびしく制限されていたかが、この事実ひとつをとっても、よくわかる。が、さらに驚いたことがある。
あちこちに史料と並んで、その史料館のだれかによるコメントが書き添えてある。
その中の随所で、「江戸時代は自由であった」「意外と自由であった」「庶民は自由を楽しんでいた」というような記述があったことである。
当然といえば当然だが、こうした関所に対する批判的な記事はいっさいなかった。
私と女房は、読んでいて、あまりのチグハグさに思わず笑いだしてしまった。
「江戸時代が自由な時代だったア?」と。
もともと自由など知らない人たちだから、こうしたきゅうくつな時代にいても、それをきゅうくつとは思わなかっただろうということは、私にもわかる。
あの北朝鮮の人たちだって、「私たちは自由だ」(報道)と言っている。
あの人たちはあの人たちで、「自分たちの国は民主主義国家だ」と主張している。
(北朝鮮の正式国名は、朝鮮人民民主主義国家。)
現在の私たちが、「江戸時代は庶民文化が花を開いた自由な時代であった」(パネルのコメント)と言うことは、「北朝鮮が自由な国だ」というのと同じくらい、おかしなことである。
私たちが知りたいのは、江戸時代がいかに暗黒かつ恐怖政治の時代であったかということ。
新居の関所はその象徴ということになる。
たまたま館員の人に説明を受けたが、「番頭は、岡崎藩の家老級の人だった」とか、「新居町だけが舟渡しを許された」とか、どこか誇らしげであったのが気になる。
関所がそれくらい身分の高い人によって守られ、新居町が特権にあずかっていたということだが、批判の対象にこそなれ、何ら自慢すべきことではない。
たいへん否定的なことを書いたが、皆さんも一度はあの関所を訪れてみるとよい。
(そういう意味では、たいへん存在価値のある遺跡である。それはまちがいない。)
そしてその関所をとおして、江戸時代がどういう時代であったかを、ほんの少しでもよいから肌で感じてみるとよい。
何度もいうが、歴史は歴史だからそれなりの評価はしなければならない。
しかし決して美化してはいけない。美化すればするほど、時代は過去へと逆行する。
そういえば関所の中には、これまた美しい人形が八体ほど並べられていたが、まるで歌舞伎役者のように美しかった。私がここでいう、それこそまさに美化の象徴と考えてよい。
(※こまかい点は、聞き覚えなので、事実と違うかもしれない。)
はやし浩司先生の育児・幼児教育コーナー10
NO’217〜NO’240
●新居の関所 | ●一芸論 |
●便利な世界 | ●一芸は聖域 |
●案ずるより産むがやすし | ●フリ勉、ダラ勉、時間ツブシ |
●威圧で閉じる子どもの耳 | ●勉強が苦手な子ども |
●よい子論 | ●「今」の価値を忘れない |
●子どもの家出 | ●ええじゃないか |
●現場主義 | ●子どもの創造力 |
●子どもの意地 | ●習うより慣れる |
●子どもの自我 | ●子どもの嫉妬 |
●いじめられっ子は徳をつむ? | ●子どもの闘争心 |
●ホームスクール | ●権威主義者 |
●いたずらとジョーク | ●無限ループの世界 |
NO’1〜NO’24 | NO’73〜NO’96 | NO’145〜NO’168 |
NO’25〜NO’48 | NO’97〜NO’120 | NO’169〜NO’192 |
NO’49〜NO’72 | NO’121〜NO’144 | NO’193〜NO’216 |
NO’217〜NO’240 | NO’241〜NO’264 | NO’265〜NO’282 |
NO’283〜NO’292 |
情報・画像の出展:はやし浩司先生
※このページの文章・及び画像の著作権は「はやし浩司」様が保有しています。
当サイトでは「はやし浩司」様のご厚意により許可を得て掲載させていただいております。
【はやし浩司先生のプロフィール】
1947年岐阜県生まれ。
金沢大学法文学部法学科卒業。
日豪経済員会給費留学生として、オーストラリアメルボン大学ロースクール(法学院)研究生、三井物産社員、幼稚園教師を経て、浜松市にてBW(ブレイン・ワーク)教室、幼児研究所を設立。
独自の哲学・教育論をもとに幼児教育の実践を行っています。
現在は教育評論家として、ホームページやブログ、メルマガ、ユーチューブ等を利用しながら執筆活動に専念しています。
●著書に「子育て最前線のあなたへ」(中日新聞社)、「おかしな時代のまともな子育て論」(リヨン社・2002年3月発行)、「ドラえもん野比家の子育て論」(創芸社)など、30冊余り。
うち4冊は中国語にも翻訳出版されています。
「まなぶくん幼児教室」(学研)、「ハローワールド」(創刊企画・学研)などの無数の市販教材も手がけ、東洋医学、宗教論の著書も計8冊出版されています。
●教育評論家、現在浜松市伝馬町でBW教室主催。
●現在は、インターネットを中心に活動中。
メルマガ・オブ・ザ・イヤー受賞(08)、
電子マガジン読者数・計3000人(09)、ほか。
「BW公開教室」を、HP上にて、公開中。
(HPへは、「はやし浩司」で検索、「最前線の子育て論byはやし浩司」より。)
過去の代表的な著書
・・・などなど30冊余り出版されています。