「アルバムをそばに置く」 はやし浩司先生の育児・教育指導
おとなは過去をなつかしむためにアルバムを見る。
しかし子どもは、アルバムを見ながら、成長していく喜びを知る。
それだけではない。子どもはアルバムを通して、過去と、そして未来を学ぶ。
ある子ども(年中男児)は、父親の子ども時代の写真を見て、「これはパパではない。お兄ちゃんだ」と言い張った。
子どもにしてみれば、父親は父親であり、生まれながらにして父親なのだ。
一方、自分の赤ん坊時代の写真を見て、「これはぼくではない」と言い張った子ども(年長男児)もいた。
ちなみに年長児で、自分が哺乳ビンを使っていたことを覚えている子どもは、まずいない。
哺乳ビンを見せて、「こういうのを使ったことがある人はいますか?」と聞いても、たいてい「知らない」とか、「ぼくは使わなかった」と答える。
記憶が記憶として想起できるようになるのは、満4・5歳前後からとみてよい(※)。
このころを境にして、子どもは、急速に過去と未来の概念がわかるようになる。
それまでは、すべて「昨日」であり、「明日」である。「昨日の前の日が、おととい」「明日の次の日が、あさって」という概念は、年長児にならないとわからない。が、一度それがわかるようになると、あとは飛躍的に「時間の世界」を広める。
その概念を理解するのに役立つのが、アルバムということになる。
話はそれたが、このアルバムには、不思議な力がある。
ある子ども(小5男児)は、学校でいやなことがあったりすると、こっそりとアルバムを見ていた。
また別の子ども(小3男児)は、寝る前にいつも、絵本がわりにアルバムを見ていた。
つまりアルバムには、心をいやす作用がある。
それもそのはずだ。
悲しいときやつらいときを、写真にとって残す人は、まずいない。
アルバムは、楽しい思い出がつまった、まさに宝の本。が、それだけではない。
冒頭に書いたように、子どもはアルバムを見ながら、そこに自分の未来を見る。
さらに父親や母親の子ども時代を知るようになると、そこに自分自身をのせて見るようになる。
それは子どもにとっては恐ろしく衝撃的なことだ。いや、実はそう感じたのは私自身だが、私はあのとき感じたショックを、いまだに忘れることができない。
母の少女時代の写真を見たときのことだ。
「これがぼくの、母ちゃんか!」と。あれは私が、小学3年生ぐらいのときのことだったと思う。
学生時代の恩師の家を訪問したときこと。
広い居間の中心に、そのアルバムが置いてあった。小さな移動式の書庫のようになっていて、そこには100冊近いアルバムが並んでいた。
それを見て、私も、息子たちがいつも手の届くところにアルバムを置いてみた。
最初は、恩師のまねをしただけだったが、やがて気がつくと、私の息子たちがそのつど、アルバムを見入っているのを知った。ときどきだが、何かを思い出して、ひとりでフッフッと笑っていることもあった。
そしてそのあと、つまりアルバムを見終わったあと、息子たちが、実にすがすがしい表情をしているのに、私は気がついた。
そんなわけで、もし機会があれば、子どものそばにアルバムを置いてみるとよい。
あなたもアルバムのもつ不思議な力を発見するはずである。
はやし浩司先生の育児・幼児教育コーナー9
NO’193〜NO’216
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●教育と指導 | ●あせる親は結論も早い |
●いい学校から、いい家庭へ | ●遊びが子どもの仕事 |
●疑いをいだかない愛 | ●思考回路 |
●愛情は落差の問題 | ●構造的な問題 |
●愛想は悪くて当たり前 | ●知識と学力 |
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●あきらめは悟りの境地 | ●読書のしつけ |
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●己こそ、己のよるべ | ●前向きの暗示を |
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【はやし浩司先生のプロフィール】
1947年岐阜県生まれ。
金沢大学法文学部法学科卒業。
日豪経済員会給費留学生として、オーストラリアメルボン大学ロースクール(法学院)研究生、三井物産社員、幼稚園教師を経て、浜松市にてBW(ブレイン・ワーク)教室、幼児研究所を設立。
独自の哲学・教育論をもとに幼児教育の実践を行っています。
現在は教育評論家として、ホームページやブログ、メルマガ、ユーチューブ等を利用しながら執筆活動に専念しています。
●著書に「子育て最前線のあなたへ」(中日新聞社)、「おかしな時代のまともな子育て論」(リヨン社・2002年3月発行)、「ドラえもん野比家の子育て論」(創芸社)など、30冊余り。
うち4冊は中国語にも翻訳出版されています。
「まなぶくん幼児教室」(学研)、「ハローワールド」(創刊企画・学研)などの無数の市販教材も手がけ、東洋医学、宗教論の著書も計8冊出版されています。
●教育評論家、現在浜松市伝馬町でBW教室主催。
●現在は、インターネットを中心に活動中。
メルマガ・オブ・ザ・イヤー受賞(08)、
電子マガジン読者数・計3000人(09)、ほか。
「BW公開教室」を、HP上にて、公開中。
(HPへは、「はやし浩司」で検索、「最前線の子育て論byはやし浩司」より。)
過去の代表的な著書
・・・などなど30冊余り出版されています。