「今を生きる2」 はやし浩司先生の育児・教育指導
英語に、『休息を求めて疲れる』という格言がある。
愚かな生き方の代名詞のようにもなっている格言である。
「いつか楽になろう、なろうと思ってがんばっているうちに、疲れてしまって、結局は何もできなくなる」という意味だが、この格言は、言外で、「そういう生き方をしてはいけません」と教えている。
たとえば子どもの教育。
幼稚園教育は、小学校へ入るための準備教育と考えている人がいる。
同じように、小学校は、中学校へ入るため。中学校は、高校へ入るため。
高校は大学へ入るため。そして大学は、よき社会人になるため、と。こうした子育て観、
つまり常に「現在」を「未来」のために犠牲にするという生き方は、ここでいう愚かな生き方そのものと言ってもよい。
いつまでたっても子どもたちは、自分の人生を、自分のものにすることができない。
あるいは社会へ出てからも、そういう生き方が基本になっているから、結局は自分の人生を無駄にしてしまう。「やっと楽になったと思ったら、人生も終わっていた……」と。
ロビン・ウィリアムズが主演する、『今を生きる』という映画があった。
「今という時を、偽らずに生きよう」と教える教師。
一方、進学指導中心の学校教育。
この二つのはざまで、一人の高校生が自殺に追いこまれるという映画である。
この「今を生きる」という生き方が、『休息を求めて疲れる』という生き方の、正反対の位置にある。
これは私の勝手な解釈によるもので、異論のある人もいるかもしれない。
しかし今、あなたの周囲を見回してみてほしい。
あなたの目に映るのは、「今」という現実であって、過去や未来などというものは、どこにもない。
あると思うのは、心の中だけ。
だったら精一杯、この「今」の中で、自分を輝かせて生きることこそ、大切ではないのか。
子どもたちとて同じ。子どもたちにはすばらしい感性がある。しかも純粋で健康だ。
そういう子ども時代は子ども時代として、精一杯その時代を、心豊かに生きることこそ、大切ではないのか。
もちろん私は、未来に向かって努力することまで否定しているのではない。
「今を生きる」ということは、享楽的に生きるということではない。
しかし同じように努力するといっても、そのつどなすべきことをするという姿勢に変えれば、ものの考え方が一変する。たとえば私は生徒たちには、いつもこう言っている。
「今、やるべきことをやろうではないか。それでいい。結果はあとからついてくるもの。学歴や名誉や地位などといったものを、真っ先に追い求めたら、君たちの人生は、見苦しくなる」と。
同じく英語には、こんな言い方がある。
子どもが受験勉強などで苦しんでいると、親たちは子どもに、こう言う。
「ティク・イッツ・イージィ(気楽にしなさい)」と。
日本では「がんばれ!」と拍車をかけるのがふつうだが、反対に、「そんなにがんばらなくてもいいのよ」と。
ごくふつうの日常会話だが、私はこういう会話の中に、欧米と日本の、子育て観の基本的な違いを感ずる。その違いまで理解しないと、『休息を求めて疲れる』の本当の意味がわからないのではないか……と、私は心配する。
はやし浩司先生の育児・幼児教育コーナー8
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【はやし浩司先生のプロフィール】
1947年岐阜県生まれ。
金沢大学法文学部法学科卒業。
日豪経済員会給費留学生として、オーストラリアメルボン大学ロースクール(法学院)研究生、三井物産社員、幼稚園教師を経て、浜松市にてBW(ブレイン・ワーク)教室、幼児研究所を設立。
独自の哲学・教育論をもとに幼児教育の実践を行っています。
現在は教育評論家として、ホームページやブログ、メルマガ、ユーチューブ等を利用しながら執筆活動に専念しています。
●著書に「子育て最前線のあなたへ」(中日新聞社)、「おかしな時代のまともな子育て論」(リヨン社・2002年3月発行)、「ドラえもん野比家の子育て論」(創芸社)など、30冊余り。
うち4冊は中国語にも翻訳出版されています。
「まなぶくん幼児教室」(学研)、「ハローワールド」(創刊企画・学研)などの無数の市販教材も手がけ、東洋医学、宗教論の著書も計8冊出版されています。
●教育評論家、現在浜松市伝馬町でBW教室主催。
●現在は、インターネットを中心に活動中。
メルマガ・オブ・ザ・イヤー受賞(08)、
電子マガジン読者数・計3000人(09)、ほか。
「BW公開教室」を、HP上にて、公開中。
(HPへは、「はやし浩司」で検索、「最前線の子育て論byはやし浩司」より。)
過去の代表的な著書
・・・などなど30冊余り出版されています。