「子どもの自我」 はやし浩司先生の育児・教育指導
ほぼ30年ぶりにS氏と会った。会って食事をした。が、どこをどうつついても、A氏から、その30年間に蓄積されたはずの年輪が伝わってこない。話そのものがかみあわない。どこかヘラヘラしているだけといった感じ。そこで話を聞くと、こうだ。
毎日仕事から帰ってくると、見るのは野球中継だけ。読むのはスポーツ新聞だけ。休みは、晴れていたらもっぱら釣り。雨が降っていれば、ただひたすらパチンコ、と。「パチンコでは半日で5万円くらい稼ぐときもある」そうだ。しかしS氏のばあい、そういう日常が積み重なって、今のS氏をつくった。(つくったと言えるものは何もないが……失礼!)
こうした方向性は、実は幼児期にできる。幼児でも、何か新しい提案をするたびに、「やりたい!」と食いついてくる子どももいれば、逃げ腰になって「やりたくない」とか「つまらない」と言う子どもがいる。フロイトという学者は、それを「自我論」を使って説明した。自我の強弱が、人間の方向性を決めるのだ、と。たとえば……。
自我が強い子どもは、生活態度が攻撃的(「やる」「やりたい」という言葉をよく口にする)、ものの考え方が現実的(頼れるのは自分という考え方をする)で、創造的(将来に向かって展望をもつ。目的意識がはっきりしている。目標がある)、自制心が強く、善悪の判断に従って行動できる。
反対に自我の弱い子どもは、物事に対して防衛的(「いやだ」「つまらない」という言葉をよく口にする)、考え方が非現実的(空想にふけったり、神秘的な力にあこがれたり、占いや手相にこる)、一時的な快楽を求める傾向が強く、ルールが守れない、衝動的な行動が多くなる。たとえばほしいものがあると、それにブレーキをかけられない、など。
一般論として、自我が強い子どもは、たくましい。「この子はこういう子どもだ」という、つかみどころが、はっきりとしている。生活力も旺盛(おうせい)で何かにつけ、前向きに伸びていく。反対に自我の弱い子どもは、優柔不断。どこかぐずぐずした感じになる。何を考えているか分からない子どもといった感じになる。
その道のプロなら、子どもを見ただけで、その子どもの方向性を見抜くことができる。私だってできる。しかし20年、30年とたつと、その方向性はだれの目から見てもわかるようになる。それが「結果」として表れてくるからだ。先のS氏にしても、(S氏自身にはそれがわからないかもしれないが)、今のS氏は、この30年間の生きざまの結果でしかない。
帰り際、S氏は笑顔だけは昔のままで、「また会いましょう。おもしろい話を聞かせてください」と言ったが、私は「はあ」と言っただけで、何も答えることができなかった。
はやし浩司先生の育児・幼児教育コーナー6
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【はやし浩司先生のプロフィール】
1947年岐阜県生まれ。
金沢大学法文学部法学科卒業。
日豪経済員会給費留学生として、オーストラリアメルボン大学ロースクール(法学院)研究生、三井物産社員、幼稚園教師を経て、浜松市にてBW(ブレイン・ワーク)教室、幼児研究所を設立。
独自の哲学・教育論をもとに幼児教育の実践を行っています。
現在は教育評論家として、ホームページやブログ、メルマガ、ユーチューブ等を利用しながら執筆活動に専念しています。
●著書に「子育て最前線のあなたへ」(中日新聞社)、「おかしな時代のまともな子育て論」(リヨン社・2002年3月発行)、「ドラえもん野比家の子育て論」(創芸社)など、30冊余り。
うち4冊は中国語にも翻訳出版されています。
「まなぶくん幼児教室」(学研)、「ハローワールド」(創刊企画・学研)などの無数の市販教材も手がけ、東洋医学、宗教論の著書も計8冊出版されています。
●教育評論家、現在浜松市伝馬町でBW教室主催。
●現在は、インターネットを中心に活動中。
メルマガ・オブ・ザ・イヤー受賞(08)、
電子マガジン読者数・計3000人(09)、ほか。
「BW公開教室」を、HP上にて、公開中。
(HPへは、「はやし浩司」で検索、「最前線の子育て論byはやし浩司」より。)
過去の代表的な著書
・・・などなど30冊余り出版されています。