親の自己中心性 はやし浩司先生から子育てママへ
「自己中心」という言葉がある。自分を中心にものを考えることをいう。
その自己中心性には、二つの方向性がある。
(1)社会的自己中心性と、(2)時間的自己中心性の二つである。
何ともカタイ話になりそうだが、要するに、自分のまわりのことだけしかものを考えないのが、社会的自己中心性。自分の時代を中心にしかものを考えないのが、時間的自己中心性という。
この(2)の時間的自己中心性というのは、私が考えた。親を見ているときに気づいた。こんな人がいた。
「子どもを育てるのは、自分の老後のため」と、その女性(五〇歳)は言った。
もう少し別の言い方をしたが、結論をまとめると、そういうことになる。
つまり「自分の老後のめんどうをみてくれるような子どもを育てるのが、子育てだ」と。
たいへん親意識の強い人だった。
「子どもが親のめんどうをみるのは当たり前」という前提で、すべてを考えていた。
だから他人の子どもを評価するときも、親のそばにいて、親孝行する子どもを、「できのいい子」。
そうでない子どもを、「できの悪い子」とした。
つまりその女性は、自分の時代を中心にしかものを考えていない。
これが私がいう、時間的自己中心性である。ほかにもこんな例がある。
ある女性(六〇歳)は、病弱な息子(三〇歳)と二人暮しをしていた。
たしかに病弱は病弱だったが、そのためその女性はお決まりの溺愛と過干渉。
息子は超マザコンタイプの、ハキのない男性になった。
その男性について、その女性はいつもこう言っている。「私が死ぬときは、息子も一緒に死にます」と。
つまりそれくらい親子のきずなが太く、その女性は親として息子をあとに残しては死ねない、と。
そこで私がその女性に、「息子さんには息子さんの人生というものがあるでしょう。それはどうするのですか」と聞くと、その女性はこう言った。
「息子の心は、私が一番よく知っています」「私が死ねば、息子は不幸になるだけです」と。
この女性もまた、自分の時代を中心にしかものを考えていないのがわかる。
つぎの世代に、よりよき時代を残す、あるいは伝えていくという姿勢がどこにもない。
一見、息子の将来を心配しているようにみえるが、その実、子どもの将来など、まるで考えていない。
自分が死んだら、あとは野となれ、山となれというわけである。
もし本当に息子の将来を心配するなら、息子を自立させるために、親としてもっとほかにすることがあるはずである。
それもしないで、つまり手厚い親の庇護(ひご)のもとだけに子どもを置き、その子どもを溺愛するのは、まさにここでいう自己中心性ということになる。
こうして自己中心性をふたつに分けて考えると、親が子育てで見せる自己中心性を、もう少し詳しく理解することができる。あなたも一度、身のまわりの人で、この見方を利用してみてはどうだろうか。
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情報・画像の出展:はやし浩司先生
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【はやし浩司先生のプロフィール】
1947年岐阜県生まれ。
金沢大学法文学部法学科卒業。
日豪経済員会給費留学生として、オーストラリアメルボン大学ロースクール(法学院)研究生、三井物産社員、幼稚園教師を経て、浜松市にてBW(ブレイン・ワーク)教室、幼児研究所を設立。
独自の哲学・教育論をもとに幼児教育の実践を行っています。
現在は教育評論家として、ホームページやブログ、メルマガ、ユーチューブ等を利用しながら執筆活動に専念しています。
●著書に「子育て最前線のあなたへ」(中日新聞社)、「おかしな時代のまともな子育て論」(リヨン社・2002年3月発行)、「ドラえもん野比家の子育て論」(創芸社)など、30冊余り。
うち4冊は中国語にも翻訳出版されています。
「まなぶくん幼児教室」(学研)、「ハローワールド」(創刊企画・学研)などの無数の市販教材も手がけ、東洋医学、宗教論の著書も計8冊出版されています。
●教育評論家、現在浜松市伝馬町でBW教室主催。
●現在は、インターネットを中心に活動中。
メルマガ・オブ・ザ・イヤー受賞(08)、
電子マガジン読者数・計3000人(09)、ほか。
「BW公開教室」を、HP上にて、公開中。
(HPへは、「はやし浩司」で検索、「最前線の子育て論byはやし浩司」より。)
過去の代表的な著書
・・・などなど30冊余り出版されています。