自己認識能力 はやし浩司先生の教育アドバイス
(自分で気がついていない部分)を知るには、どうしたらいいかということになる。
そこで登場するのが、自己認識能力ということになる。
発達心理学の用語だが、その一例をあげる。
AD・HD児だった男子(当時、中3)がいた。
たいへんなAD・HD児で、幼稚園の先生も、小学校の先生も、そして私も苦労をした。
が、AD・HD児でも、小学3、4年生くらいから、急速に落ち着いてくる。
自己管理能力が育ってくるためである。
この時期を過ぎると、持ち前のバイタリィティがよいほうに作用し、学習面やスポーツ
面で飛躍的に伸びることがある。
その中学生もそうだった。
そのとき浜松市内でも、いちばんという進学校に合格していた。
そこである日、その中学生に、私はこう聞いた。
「君は子どものころ、みんなにめいわくをかけたが、覚えているか?」と。
すると、その子どもは、平然とこう言ってのけた。
「ぼくは、何も悪いことはしていない。
みんなが、ぼくを目の敵(かたき)にして、いじめた」と。
何度か確かめてみたが、彼には、みなに迷惑をかけたという意識は、まったくなかった。
つまり、(自分を知る)ということは、それほどまでに、むずかしい。
●帰宅拒否児
私にことを書く。
私が、子どものころ、帰宅拒否児であったということは、この世界に入って
はじめて知った。
私は小学生のころ、学校からまっすぐ家に帰ったということは、ほとんどなかった。
道草を食うなどということは、当たり前。
それがそのまま、日課になっていた。
だからある日、年長女児をもつ母親から、道草の相談を受けたときには、正直言って、
少し面食らった。
「そんなこと、どうでもいいではないですか」と言いかけたが、それは言わなかった。
で、話を聞いていくと、どうやら家庭に原因のある、帰宅拒否児ということがわかった。
不登校児、あるいは学校恐怖症の子どもの反対側にいる子どもと理解するとわかりやすい。
で、そのとき気がついた。
私自身も、実は、帰宅拒否児だった、と。
それは私にとっては、大きなショックだった。
私は意識しないまま、毎日、自分の行動を決めていた。
(家へ帰るのがいや)という思いがどこかにあって、それが道草に
つながっていた。
●自分を知るために
そこで心理学の世界では、いろいろな方法を使って、(自分で気がついて
いない部分)を、さぐろうとする。
面談方式とか、対話方式というのも、考えられている。
が、いちばん手っ取り早い方法は、親しい友人に、自分のことを語ってもらうというのがある。
そういう意味では、多くの友人をもつということは、大切なことでもある。
友人が多ければ多いほど、自分の姿が、その中から浮かびあがってくる。
「お前なア、お前のここんとこ、おかしいよ」と言ってくれる友だちがいれば、
すばらしい。
妻でも、子どもでもよい。
が、もうひとつの方法は、心理学の本を読みながら、自己分析していくというもの。
私自身も、自分が、うつ気質であるのを知るのに、ずいぶんと時間がかかった。
それには、こんなエピソードがある。
そのとき私は、不眠に悩んでいた。
朝早く目が覚めてしまい、それが重なって睡眠不足状態になっていた。
仕事にしても、1週間ほど前から気になってしかたなかった。
そこである医院(内科)へ行き、あれこれ相談すると、その医師が、ズバズバと私の症状を言い当ててくれた。
「さすが、ドクター!」と感心していると、そのドクターはこう言った。
「いや、林さん、実は私もそうなのですよ」と。
●ためこみ屋
(自分で気がついていない部分)といっても、もちろん2種類ある。
(好ましい部分)と、(好ましくない部分)である。
そこでひとつのケースを考えてみたい。
最近、私はある知人(65歳くらい)の男性の家を訪れてみて、たいへん驚いた。
玄関先から、モノ、モノ、モノであふれかえっていた。
出入りも、そのモノをさけて、しなければならなかった。
天井からも無数の衣服が、つりさげられていた。
いわゆる「ためこみ屋症候群」と呼ばれる、行為障害のひとつである。
このタイプの人は、ひどくなると、ゴミですら、捨てられなくなる。
そこでもしあなたがその場にいたとしたら、あるいはその人の友人であるとしたら、あなたはどうやって、その人にその(好ましくない部分)を、知らせることができるだろうか。
自分で気がつかせるだろうか。
さあ、どうするだろうか?
……といっても、その方法はむずかしい。
実際、私はその知人には、何も言えなかった。
「あなたは、おかしいですよ」などとは、ぜったいに、言えない。
その人は、その人。
だれかに迷惑をかけているわけではない。
その知人は、自分の家の中で、そうしていた。
で、私はそのまま黙って、家に帰った。
が、もしその知人が、ほんの少しでも、自分で本を読む能力と機会があったら、どうだろうか。
私のHP、もしくはBLOGでもよい。
どこかで「ためこみ屋」という言葉を見つけるかもしれない。
そしてそれをきっかけに、自分のことを知るかもしれない。
●智力との闘い
こうして考えていくと、(自分で気づかない部分)を知るための最大の武器は、
「智力」ということになる。
知恵、知性でもよい。
そしてその知力は、東洋医学では、つぎのようにして生まれる。
(はやし浩司著、「目で見る漢方診断」より。)
(意)→(志)→(思)→(慮)→(智)と。
なお東洋医学では、精神活動も、肉体活動と密接不可分のものとして
考える。
霊的な、いわゆるスピリチュアルな(精神)というものは、認めていない。
わかりやすく言えば、肉体も病むように、精神もまた病むということ。
(詳しくは、「はやし浩司のHP」より、「目で見る漢方診断」へ。)
そしてその智力が、その人の運命を変えていく。
また運命を変える、武器となりえる。
言いかえると、私たちが日夜肉体の健康を維持するように、精神の健康を
維持する努力を怠ってはいけないということになる。
運命というのがそこにあるとしても、健全な精神があってこそ、私たちは、
それと闘うことができる。
けっして、運命に翻弄(ほんろう)されてはいけない。
……とまあ、大上段な書き方をしてしまったが、大筋ではまちがって
いないと思う。
ともかくも、(自分で気がついていない部分)を知るということは、大切なこと。
そのためのひとつの方法として、精神の健康を保ち、智力をみがく。
結局は、それが運命と闘う、もっとも効果的な方法ということになる。
情報・画像の出展:はやし浩司先生
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当サイトでは「はやし浩司」様のご厚意により許可を得て掲載させていただいております。
【はやし浩司先生のプロフィール】
1947年岐阜県生まれ。
金沢大学法文学部法学科卒業。
日豪経済員会給費留学生として、オーストラリアメルボン大学ロースクール(法学院)研究生、三井物産社員、幼稚園教師を経て、浜松市にてBW(ブレイン・ワーク)教室、幼児研究所を設立。
独自の哲学・教育論をもとに幼児教育の実践を行っています。
現在は教育評論家として、ホームページやブログ、メルマガ、ユーチューブ等を利用しながら執筆活動に専念しています。
●著書に「子育て最前線のあなたへ」(中日新聞社)、「おかしな時代のまともな子育て論」(リヨン社・2002年3月発行)、「ドラえもん野比家の子育て論」(創芸社)など、30冊余り。
うち4冊は中国語にも翻訳出版されています。
「まなぶくん幼児教室」(学研)、「ハローワールド」(創刊企画・学研)などの無数の市販教材も手がけ、東洋医学、宗教論の著書も計8冊出版されています。
●教育評論家、現在浜松市伝馬町でBW教室主催。
●現在は、インターネットを中心に活動中。
メルマガ・オブ・ザ・イヤー受賞(08)、
電子マガジン読者数・計3000人(09)、ほか。
「BW公開教室」を、HP上にて、公開中。
(HPへは、「はやし浩司」で検索、「最前線の子育て論byはやし浩司」より。)
過去の代表的な著書
・・・などなど30冊余り出版されています。