日本の学歴制度 はやし浩司先生の教育アドバイス
インドのカースト制度を笑う人も、日本の学歴制度は、笑わない。どこかの国のカルト信仰を笑う人も、自分たちの学校神話は、笑わない。その中にどっぷりとつかっていると、自分の姿が見えない。
少しかたい話になるが、明治政府は、それまでの士農工商の身分制度にかえて、学歴制度をおいた。
最初からその意図があったかどうかは知らないが、結果としてそうなった。
明治11年の東京帝国大学の学生の75%が、士族出身だったという事実からも、それがわかる。そして明治政府は、いわゆる「学校出」と、そうでない人を、徹底的に差別した。
当時、代用教員の給料が、4円(明治39年)。学校出の教師の給料が、15〜30円、県令(今の県知事)の給料が250円(明治10年)。
1円50銭もあれば、一世帯が、まあまあの生活ができたという。そして今に見る、学歴制度ができたわけだが、その中心にあったのが、官僚たちによる、官僚政治である。
たとえて言うなら、文部省が総本山。各県にある教育委員会が、支部本山。そして学校が、末寺ということになる。
こうした一方的な見方が、決して正しいとは思わない。教育はだれの目にも必要だったし、学校がそれを支えてきた。
しかし妄信するのはいけない。どんな制度でも、行き過ぎたとき、そこで弊害を生む。日本の学歴制度は、明らかに行き過ぎている。
学歴のある人は、たっぷりとその恩恵にあずかることができる。そうでない人は、何かにつけて、損をする。
この日本には、学歴がないと就けない仕事が、あまりにも多い。多すぎる。親たちは日常の生活の中で、それをいやというほど、肌で感じている。だから子どもに勉強を強いる。
もし文部省が、本気で、学歴社会の打破を考えているなら、まず文部省が、学歴に関係なく、職員を採用してみることだ。
過激なことを書いてしまったが、もう小手先の改革では、日本の教育は、にっちもさっちもいかないところまで、きている。
東京都では、公立高校廃止論、あるいは午前中だけで、授業を終了しようという、午後閉鎖論まで、公然と議論されるようになっている。それだけ公教育の荒廃が進んでいるということになる。
しかし問題は、このことでもない。
学歴信仰にせよ、学校神話にせよ、犠牲者は、いつも子どもたちだということ。今の、この時点においてすら、受験という、人間選別の(ふるい)の中で、どれほど多くの子どもたちが、苦しみ、そして傷ついていることか。そしてそのとき受けた傷を、どれだけ多くのおとなたちが、今も、ひきずっていることか。それを忘れてはいけない。
ある中学生は、こう言った。
「学校なんか、爆弾か何かで、こっぱみじんに、壊れてしまえばいい」と。
これがほとんどの子どもの、偽らざる本音ではないだろうか。ウソだと思うなら、あなたの、あるいはあなたの近所の子どもたちに、聞いてみることだ。
子どもたちの心は、そこまで病んでいる。
(中日新聞掲載記事1997)
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【はやし浩司先生のプロフィール】
1947年岐阜県生まれ。
金沢大学法文学部法学科卒業。
日豪経済員会給費留学生として、オーストラリアメルボン大学ロースクール(法学院)研究生、三井物産社員、幼稚園教師を経て、浜松市にてBW(ブレイン・ワーク)教室、幼児研究所を設立。
独自の哲学・教育論をもとに幼児教育の実践を行っています。
現在は教育評論家として、ホームページやブログ、メルマガ、ユーチューブ等を利用しながら執筆活動に専念しています。
●著書に「子育て最前線のあなたへ」(中日新聞社)、「おかしな時代のまともな子育て論」(リヨン社・2002年3月発行)、「ドラえもん野比家の子育て論」(創芸社)など、30冊余り。
うち4冊は中国語にも翻訳出版されています。
「まなぶくん幼児教室」(学研)、「ハローワールド」(創刊企画・学研)などの無数の市販教材も手がけ、東洋医学、宗教論の著書も計8冊出版されています。
●教育評論家、現在浜松市伝馬町でBW教室主催。
●現在は、インターネットを中心に活動中。
メルマガ・オブ・ザ・イヤー受賞(08)、
電子マガジン読者数・計3000人(09)、ほか。
「BW公開教室」を、HP上にて、公開中。
(HPへは、「はやし浩司」で検索、「最前線の子育て論byはやし浩司」より。)
過去の代表的な著書
・・・などなど30冊余り出版されています。